日本大百科全書(ニッポニカ) 「環状岩脈」の意味・わかりやすい解説
環状岩脈
かんじょうがんみゃく
ring dike
指輪のような環状(リングring)になった岩脈。火山が、カルデラをつくるような破局噴火をして、地下のマグマ溜まりにあったマグマが一気に噴出すると、一時的に地下に空洞ができる。地下の大きな空洞は保持できないため、この空洞の上の岩石は、下に少し広がった円筒形の断層ができることによって陥没する。この際、残っていたマグマが絞り出されて円筒形の断層の部分に沿って貫入し、結果的に円筒状の岩脈が形成される。これが長い年月かかって浸食され地表に現れると、地形図で環状の岩脈が見られることになる。環状岩脈が地表に現れ見られるということは、地形的な凹みであるカルデラが、現在は見られない場所に、かつて形成されていたことを意味する。このような陥没構造として残っているものをコールドロンcauldronとよぶ。
宮崎県北部から大分県にかけて分布する新生代中新世中期の大崩山(おおくえやま)火山‐深成コンプレックス(複合岩体)では、東西35キロメートル、南北22キロメートルの楕円形(だえんけい)の環状岩脈が存在し、岩脈は最大で幅1キロメートルにも達する。この環状岩脈は、周辺の四万十帯(しまんとたい)の付加コンプレックスよりも浸食に対して強いため、切り立った山稜として認められる。なお、岩脈dikeとは、本来は塀という意味の英語が、地質用語に転用されたものであり、大崩山付近ではまさに巨大な塀の存在が見られる。
[村田明広]