生体元素(読み)セイタイゲンソ

関連語 哺乳動物

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生体元素」の意味・わかりやすい解説

生体元素
せいたいげんそ

元素ともいい、生物が生活機能を営むためになくてはならない元素をいう。一般の生物に含まれる主要な元素として、炭素水素酸素窒素硫黄(いおう)、リンナトリウムカリウムマグネシウムカルシウム塩素の計11種がある。ヒトの場合、これらの元素が体重の約99%を占めている。これらはいずれも生物にとって必要不可欠な元素である。高等動物の場合、このほかに微量ではあるが必要な元素として、フッ素、ケイ素、バナジウムクロムマンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛セレンモリブデンスズ、ヨウ素の13種があげられている。また、ニッケル、鉛も必要らしい。これらの微量元素のうち、金属元素はイオンの形で酵素の特別な部位に結合している例が多い。酵素タンパク質の立体構造を安定化させたり、触媒反応に関与していると考えられる。さらに鉄、コバルト、亜鉛などは、イオンとして可逆的に酸化還元を行うことができ、酸化還元反応をつかさどる酵素の活性中心の一部となっている場合がある。これらの元素に加えて、高等植物の場合、ホウ素が不可欠であるが、動物や微生物ではそうではない。このように、ある限られた生物種、または限られた環境に生きる生物群にとって、ある種の特別な元素が必要とされる場合がある。また一般に、生物の体内には土壌中に存在するほとんどすべての元素が含まれているが、かならずしも不可欠でなく、機能のはっきりしないものも多い。ヒ素カドミウムなどの有害な元素が、哺乳動物にとって微量は必要だという説もあるが、まだ不確定である。

[笠井献一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android