書店(読み)しょてん

精選版 日本国語大辞典 「書店」の意味・読み・例文・類語

しょ‐てん【書店】

〘名〙 書物を売ったり、出版したりする店。本屋書肆(しょし)
随筆・秉燭譚(1729)四「近比書店にて」

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デジタル大辞泉 「書店」の意味・読み・例文・類語

しょ‐てん【書店】

書物を売る店。また、書物を出版する店。本屋。
[類語]本屋書房書林書肆

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「書店」の意味・わかりやすい解説

書店
しょてん

通常は出版物の小売店をさし、本屋とほぼ同義。古くは書肆(しょし)、書林、書房ともいう。近世から近代初期までの出版産業においては、編集・製作と流通が未分化であり、古本や貸本も含めて、複数の業態を営む業者の総称として用いられた。また明治期には、各地の有力商家や宿屋が、初等教科書の翻刻や書物市の開催などを機に創業する例もあった。大正期には、雑誌に代表される近代的出版産業の発達とともに分業化が進み、さらに戦時の出版配給統制によって、書籍と雑誌の流通が一元化されると、現在のように新刊書籍と雑誌を併売する小売書店が標準的モデルとして完成した。海外のbookstoreは一般に書籍店であり、雑誌の扱いは少ない。

[柴野京子 2023年10月18日]

戦後の書店動向

日本の書店の特徴である書籍と雑誌の併売は、出版取次とよばれる集中的な卸売システムによって担保されている。書籍の新刊と雑誌は、出版社と取次の間で配本数が決められ、書店の実績などに応じて配分される。これを書店は委託という形で受け取り、定められた期間内に販売して、残りを取次に返品することができる。既刊の書籍については、必要に応じて注文することが可能だが、出版社と取次が主導する商流のありかたは、小売のリスクが少ないかわりに書店の意思が反映されづらい、品ぞろえが均一化する、などの問題をはらんできた。いっぽうジャンルを問わないことで幅広い顧客に対応でき、利益率・商品回転率のよい雑誌が、スケールメリットとなって書籍の流通を助けてきた側面もある。

 書店のタイプとしては、紀伊國屋書店丸善(現、丸善ジュンク堂書店)、三省堂書店のような、都市部を中心に展開する全国チェーン、各地方都市の中核を担ってきた老舗書店、中小書店などに大別される。総じて日本においては人口当りの書店数が多く、立地や商品特性によるすみ分けがなされてきたが、1970年代から1980年代にかけて、モータリゼーションの進行とともに、旧市街を離れたロードサイドの郊外型店舗が現れた。同時期、アメリカ式のショッピングセンターやPOS(ポス)レジによるチェーン・オペレーションが導入され、AV(オーディオ・ビジュアル製品)や雑貨を複合した新興チェーン、さらにはコンビニエンス・ストアが加わり、とりわけ地方書店の様相は大きく変貌した。全国の書店数は1990年前後におよそ2万3000軒程度でピークを迎えたと推定されるが、そこに至る10年間の新規出店のうち、約3000軒が郊外型書店である。

[柴野京子 2023年10月18日]

インターネットによる書店への影響

1990年代後半からは、インターネットによる書店が登場した。草創期の1990年代なかばには、丸善、紀伊國屋書店、トーハン、図書館流通センター(TRC)、ヤマト運輸の宅配網を生かして本の注文サービスを行うブックサービス(2019年解散)など、既存の出版流通業者を中心にサービスが開始されている。インターネットの個人利用が進む2000年(平成12)ごろには、楽天ブックス、アマゾン・ジャパン、bk1(ビーケーワン)(2012年、大日本印刷が運営するhonto(ホント)に統合)など、外国資本を含むITや通信キャリアが相次いで書店に参入した。2010年代以降は電子書籍の販売も本格化し、インターネット上で電子書籍をダウンロードできる電子書店のみならず、紙の本と電子版を選択できるハイブリッド書店や、サブスクリプション(定額制の読み放題サービス)、オーディオブックなど、ストリーミング系のサービスも増加している。

 このような変化のなかで、従来型の書店は2000年代から減少を続け、2020年代にはついに1万軒を下回った。出版文化産業振興財団が2023年(令和5)に発表した調査では、書店のない市町村が26%との結果が出ている。直接的な原因には、商圏の変化、雑誌市場の大幅な縮小があるが、本のデータベースから欲しい商品を検索し、手元に送ってもらうというインターネット書店のビジネスモデルは、チェーン店など標準的な品ぞろえの一般書店を淘汰(とうた)した。一部の有力書店は、2000年施行の大店立地法も手伝って超大型化し、他方では雑誌にかわる商材として、飲食の提供や生活雑貨の販売を行う滞在型の店舗も増えている。

 加えて2010年代以降、従来型書店とは異なるタイプの新しい個人書店が多くみられるようになった。書店員が独立して開業するケースもあるが、ほとんど書店経験のない個人が、賃料の安い物件で小規模に営業するものも少なくない。これらの個人書店は、委託による商品仕入れではなく、一点ずつ自らの意思で注文している点でセレクトショップに近く、従来型出版流通とは異なるモデルとして、少量流通のルートや、簡便な店舗オペレーションシステムも開発されている。また読書会や作家を招いてのミニイベントを行うなど集客に工夫がみられ、本を通じたコミュニティセンターの役割も期待されている。

[柴野京子 2023年10月18日]

『尾崎秀樹・宗武朝子編『日本の書店百年――明治・大正・昭和の出版販売小史』(1991・青英舎)』『村上信明著『書店業新時代』(1994・新文化通信社)』『柴野京子著『書棚と平台――出版流通というメディア』(2009・弘文堂)』『星野渉著『出版産業の変貌を追う』(2014・青弓社)』『内沼晋太郎『これからの本屋読本』(2018・NHK出版)』『本の雑誌編集部編『本屋、ひらく』(2023・本の雑誌社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「書店」の意味・わかりやすい解説

書店 (しょてん)

書籍・雑誌などの小売業。本屋ともいう。江戸期初め民間で出版活動がはじまってから明治初期までは,板元(はんもと)(版元,書肆(しよし),本屋)が編集から製作,卸,小売,古書の売買を一手におこなっていた。したがって,書店とは本来,出版社,取次店,新刊本小売店,古書店の総称であり,現在も出版社,取次店が書店を名のるのはそのなごりである。

 小売専業の書店は明治維新の前後に発生した新しいメディアである新聞・雑誌の誕生,鉛活字による近代印刷術や洋紙,洋式製本術の輸入による出版の近代化の開始,そして政府による中央集権化や1872年(明治5)の〈学制〉頒布による教育制度の改革などがすすみ,読み書き能力の向上とともに出版点数,出版量が増大するなかで小売専業店は増えていった。また地方の板元は情報の中央化がすすむなかで出版活動をやめ,販売に専念する例が多かった。東京でも出版量の増加と新規出版社の出現によって,出版と小売の分業化がおこなわれた。しかし,明治から昭和前期までは,小売書店は出版社の下位におかれ,小売書店が出版業界の同業組合に加入を認められるのは1907年であり,小売書店中心の同業組合,東京図書雑誌純小売業組合が結成されるのは1920年のことである。

 現在,書店は全国に2万数千店配置されており,かつては出版物総売上額の90%以上を占有していたが,1960年前後の出版社系週刊誌誕生以後,鉄道弘済会ルートや新たに発生したスタンドルート,コンビニエンス・ストアなどにより雑誌流通の書店シェアは低下した。また書籍のシェアも,流通ルートの多様化などによって低下している。現在,書店ルートの書籍・雑誌扱い占有率は60%台である。全国の書店の平均的売場面積は20坪で経営規模は小さいものが圧倒的であるが,一方,紀伊国屋書店丸善三省堂書店,ジュンク堂など全国的な大型書店や,文教堂,アシーネ,平安堂,宮脇書店など多店化した大規模経営も増えている。書店大型化と多店化は,64年に紀伊国屋書店新宿本店が木造2階建てから地下2階,地上9階のビルに改築されたのをきっかけとして60年代後半から活発化し,78年には八重洲ブック・センターが開店し,他業種から参入した大型店として注目された。

 書店の仕入条件は通常定価の75~82%で,バックマージンを含めて平均の粗利益率は20~25%くらいである。粗利益率に比して経営が安定していたのは,再販制(再販売価格維持契約)によって定価販売がおこなわれてきたからである。書店経営の特徴としてこれまでは,返品自由の委託制と定価制を柱としてきたことから危険負担は少なかった。反面仕入機能が弱いこと,粗利益率がほぼ固定化しているためスケールメリットが乏しいこと,人件費率が高いこと,多数出版社の商品の合売制のため専門店化しにくく,需要開拓力や宣伝力が弱いこと,などがあげられる。近年一部書店の大型化,多店化と売上伸び率,集客力の強さ,安定した経営に魅せられて他業種からの新規参入もあり,小規模書店の経営は一段と圧迫される傾向にある。1990年代後半の時点で,毎年5万~6万点の新刊書籍と3000種以上の雑誌が発行され,新刊本として流通する書籍は60万点を超えるが,この受入れ態勢づくりと情報整備は,出版流通を担う書店の課題になっている。なお全国組織である日本書店商業組合連合会(日書連)の組合員は減少,2006年4月現在約6700名である。
出版
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図書館情報学用語辞典 第5版 「書店」の解説

書店

図書,雑誌などの出版物を直接読者に販売する小売り商.出版物の小売り店のことで,本屋,書肆ともいう.書店は,新刊出版物を扱う新刊書店のことを指すのが一般的な用法であり,古本を扱う古書店とは区別される.歴史的に見ると,江戸時代の書肆,明治前期の書店は,現在の出版社と書店を兼ねた存在であり,この名残が例えば岩波書店などの名称に残っている.その後,明治中期以降,現在の書籍取次が書店からの分離を開始している.例えば,東京堂書店は現在は書店であるが,第二次大戦前は,取次も兼ねていた.日本の出版物の販売制度の特徴は,委託販売制と定価販売(再販制)にあり,このもとで読者への店頭での展示販売を受け持つ書店は,諸外国と比べて著しく充実しているといわれている.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の書店の言及

【出版】より

… 日本の出版流通はたいへん効率よく組織されている。いわゆる正常ルートと呼ばれる,出版社→取次店(問屋)→小売書店,のチャンネルによって,総出版物の半ば以上が,自動的に全国に流れ,読者の目に触れるしくみになっており,流通費(流通部門のとるコミッション)は,相対的には世界で最も安い。しかし近年出版物の消費化(マスプロ・マスセール化)が進み,後に述べるような種々の問題を生じたため,正常ルート以外に,生協(大学生活協同組合)ルート,月販(割賦(かつぷ)販売)ルート,即売(スタンド)ルート,直販ルート(ダイレクト・メール,ブッククラブなど),コンビニエンスストア・ルート,鉄道弘済会ルート,教科書ルートなど新旧各種の販売チャンネルが開発され,多様化を進めている。…

※「書店」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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