男女の法(読み)だんじょのほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「男女の法」の意味・わかりやすい解説

男女の法
だんじょのほう

日本書紀大化(たいか)元年(645)8月庚子(こうし)条に記された身分法人民を良人(りょうじん)と奴婢(ぬひ)に二分し、各身分間の所生子の帰属(所生の奴婢については主に所有権)を規定する。良人男女間の子は父に配する。良男と婢の間の子は婢に配し、良女と奴の間の子は奴に配し、奴婢間の子は婢に配し主家の所有とする(奴婢となる)。寺家の仕丁(しちょう)(隷属民)は、奴婢とされている場合以外は良人に準じて法を適用する。

[石上英一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「男女の法」の意味・わかりやすい解説

男女の法
だんじょのほう

孝徳天皇の大化1 (645) 年8月に発布された法令。内容は,(1) 良民父母の間に生れた子は父に帰属させる。 (2) 父母のいずれか一方が奴婢である場合には,その子は奴婢とする。 (3) それぞれ主人を異にする奴婢の間に生れた子は,母方の婢に帰属させる。 (4) 寺院の所有する仕丁 (しちょう) の子は,原則として良民の法に従うが,特に奴婢とされているものに限って奴婢の法を適用する。中国の法に強く影響を受けたもので,一般的な意味としては婚姻法,身分法であり,訴訟基準を定めたものとみられる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「男女の法」の解説

男女の法
だんじょのほう

大化の改新後の645年(大化元)8月5日に出された法令。所生子の帰属について定めたもので,良民男女間の子は父に,良男・婢の間の子は母に,良女・奴の間の子は父に,二つの家の奴婢間の子は母に配する規定であった。「日本書紀」によれば改新後の初の立法であり,訴訟の基準をあらかじめ示す意味があったとみられる。

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世界大百科事典(旧版)内の男女の法の言及

【大化改新】より

…また,使者派遣と同じ日に,朝廷は中国の古典により〈鍾匱(しようき)の制〉を設けて,人民が管理者である伴造(とものみやつこ)や国造ら豪族の裁判に不服なときは朝廷の櫃に上申書を入れさせ,上申書の朝廷での処理が不当なときには鐘を打たせることとした。そして良・賤の区別を明らかにするためには〈男女の法〉を公布して,良民相互,良民と賤民,賤民相互の間に生まれた子をそれぞれ父母のどちらにつけるかを定めた。さらに僧尼統制のために〈十師〉という10人の代表者を僧の中から任命する一方では,俗人から任命した寺司らに各寺の所有する奴婢や土地を調査させるなど,新政を推進して,その年末には都を海外との交渉に便利な難波に移した。…

※「男女の法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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