発癌性リスク(読み)はつがんせいりすく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「発癌性リスク」の意味・わかりやすい解説

発癌性リスク
はつがんせいりすく

世界保健機関(WHO)の外部専門機関で、癌研究に関する国際的な調和の促進を目的とする国際がん研究機関IARC)が、一覧表として公開している、化学物質混合物および環境がもたらすヒトへの発癌性リスクの分類。リスクの高い順から1~4のグループに分類され、グループ2はさらに2Aと2Bに分けられる。

 グループ1は、ヒトに対して発癌性が認められる(carcinogenic to humans)もの。ヒトや動物に対する実験で発癌性があるとされた場合に認定される。2016年2月時点で、ベンゼンアスベスト石綿)およびカドミウムなどの化学物質、アルコール飲料や加工肉などの混合物、喫煙受動喫煙および日焼けマシンなどの環境の3分野合計118種類が公表されている。このなかでソーセージベーコンなどの加工肉は、2015年に大腸癌の発癌リスクがあるとしてこのグループに加えられ、話題となった。

 グループ2Aは、ヒトに対しておそらく発癌性がある(probably carcinogenic to humans)もの。ヒトへの発癌性は限定的だが動物に対する実験で発癌性があるとされた場合に認定される。2016年2月時点で、紫外線アクリルアミドアドリアマイシンなどの化学物質、クレオソートなどの混合物、美容・理容石油精製などの従事者や交替制勤務などの環境の3分野合計79種類が公表されている。交替制勤務については発癌性リスクの観点から、労災認定の条件に加えている国もある。

 グループ2Bは、ヒトに対して発癌性がある可能性がある(possibly carcinogenic to humans)もの。ヒトへの発癌性は限定的であり動物に対する実験でも発癌性が明確でない場合である。2016年2月時点で、アセトアルデヒドや鉛およびコバルトなどの化学物質、ポリ臭化ビフェニルやガソリンエンジンの排気ガスなどの混合物、ドライクリーニングや印刷作業の従事者などの環境の3分野290種類が公表されている。

 グループ3は、ヒトに対する発癌性について分類できない(not classifiable as to its carcinogenicity to humans)もの。ヒトへの発癌性については証拠が不十分であり動物に対する実験でも証拠が限定されるか不十分で、ほかのグループに分類できない場合である。2016年2月時点で、アクリル酸や塩素消毒水、およびメチルレッドをはじめとする染料などの化学物質、原油や茶などの混合物、皮革製造やペンキ製造の従事者などの環境の3分野501種類が公表されている。

 グループ4は、ヒトへの発癌性がおそらくない(probably not carcinogenic to humans)もの。ヒトへの発癌性のない証拠があり、動物に対する実験でも同様な証拠がある場合。2016年2月時点で、ナイロンの原料となるカプロラクタムのみが公表されている。

[編集部 2016年10月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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