百論(読み)ヒャクロン

デジタル大辞泉 「百論」の意味・読み・例文・類語

ひゃくろん【百論】

仏教書。2巻。提婆だいば著。鳩摩羅什くまらじゅう訳。竜樹の「中論」に基づいてくう思想を明らかにしたもの。三論の一で、三論宗の依拠書。

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精選版 日本国語大辞典 「百論」の意味・読み・例文・類語

ひゃくろん【百論】

  1. 大乗仏教の論書。二巻。提婆(だいば)著。四〇四年鳩摩羅什(くまらじゅう)訳。他の諸学派の考え方を批判しながら、空・無我の思想を明らかにする。三論・四論の一つで、三論宗の根本聖典。梵本・チベット訳は伝わらない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「百論」の意味・わかりやすい解説

百論
ひゃくろん

アーリヤデーバ(聖提婆(しょうだいば)、2~3世紀)の著作。「経」(修妬路(しゅとろ)、スートラ)とよばれる著者自身の簡略な本文と、それに対して婆数(ばす)が加えた注釈とが、漢訳として現存。師ナーガールジュナ(龍樹(りゅうじゅ))の『中論』に基づいて、自我常住実体などについての他学派の学説を批判することによって、空(くう)の思想を明らかにしたもの。同一の著者による『四百論』が「百論」と称されることがあるが、それは別の著作。『百論』は中国で『中論』『十二門論』と並んで三論の一つとされ、三論宗の基礎となった。

[江島惠教]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「百論」の意味・わかりやすい解説

百論
ひゃくろん

インド提婆 (だいば) の著。鳩摩羅什 (くまらじゅう) が漢訳。2巻。 100の詩句とそれに対する注釈とから成る。内容は三宝に対する帰敬序に始まり,龍樹の空観の立場から,サーンキヤ,バイシェーシカニヤーヤなど仏教以外のインド哲学諸派の世界観,人性論,解説論を論破し,仏教の正しい見解を示す。チベット訳にある『四百論頌』の原本要領を解説的に取捨したものであり,広大な龍樹哲学への入門書ともみられる。

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世界大百科事典(旧版)内の百論の言及

【提婆】より

…その思想的特徴は,破邪の強調にあるとされ,激しく小乗や外道(仏教以外の宗教,哲学)を批判したため,ついには外道によって斬殺されたという。著作には《四百論》《百論》《百字論》があるが,《智心髄集》という仏教綱要書は提婆に帰せられるものの,後代の作である。なお《百論》は《中論》《十二門論》とともに三論宗で重視されたため,古来,中国,日本でよく学ばれた。…

※「百論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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