改訂新版 世界大百科事典 「直接圧延」の意味・わかりやすい解説
直接圧延 (ちょくせつあつえん)
direct rolling process
金属の溶融と圧延加工を結びつけた方法で,連続鋳造機から出てくる熱い鋳塊を直接圧延する場合と,溶融金属から直接に薄板,棒,管などを製造する場合の二つがある。前者の方法はインラインリダクション法in-line reduction processとも呼ばれ,同一寸法の鋳片から圧延工場の要求に応じた鋳塊寸法を得ることを目的としている。後者は,回転するロール間隙で溶融金属を冷却,凝固,圧延して製品とする。鋳造工程と圧延工程とを同時に進行させるので,造塊,均熱,分塊加工,加熱工程を省略することができる。この方法は転炉製鋼法を発明したH.ベッセマーによって1946年に考案されたもので,連続鋳造法の原型である。可鍛鋳鉄の薄板の製造に成功したが,当時の技術的条件では実用化には至らなかった。直接圧延法の最大の長所は,塑性加工性の小さい鋳造材,難加工材の長尺製品が得られることである。ソ連(現,ロシア)では建築材料,日用品用材としてベッセマー方式の直接圧延機で(図1)鋳鉄板を製造している。アルミニウムは融点が660℃と低いために,回転するロール間隙に溶融金属を供給するノズルに耐火物を使用でき,溶融金属をロール下方から供給する方法(ハンター法,図2)や横から供給する方法が実用されている。薄板,棒の製造には輪や鋼帯などを用いる各種の方法があるが,管の製造法は試験研究の段階である。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報