日本大百科全書(ニッポニカ) 「直播き栽培」の意味・わかりやすい解説
直播き栽培
じかまきさいばい
作物の種子や種いもをじかに田畑に植え付ける栽培法で、直播(ちょくは)栽培ともいう。これに対し、まず苗床に植え付け、ある程度育った苗を田畑に移し植える方法を移植栽培という。直播き栽培は移植栽培に比べ苗の管理や移植作業が不要なので、労力が少なくてすむ。しかし、一般に直播きは発芽が不ぞろいになりやすく、生育初期の保護が十分にできないため、霜害、冷害、干害、病虫害、鳥害などを受けやすい。移植すると根が損傷を受けて商品価値が落ちる根菜類などや、植物の特性として移植を嫌う作物、大規模に栽培される穀類などは直播き栽培されている。水稲もアメリカなどでは直播きされている。日本でも奈良時代以前は水稲は直播きであった。その後、移植栽培が中心となったが、一部の地域では直播きが続けられていた。水稲の直播き栽培には、田を干して播種する乾田直播と、水を張った田に播種する湛水(たんすい)直播とがある。水稲の乾田直播き栽培は昭和30年代には省力栽培法として注目されたが、昭和40年代に田植機が普及して下火となった。そして最近は生産費削減を目的とした湛水直播の研究が始められている。
[星川清親]