初夏または晩秋に、気温が急に低下して、農作物や果樹に被害を与える現象。初夏のものを晩霜害、晩秋のものを初霜害という。霜害といっても、霜が直接被害を与えるわけではなく、霜が降りるほどの低温によって、農作物の細胞の内または外の水分が凍り、そのために細胞は奪水されて枯死するので、機構的には寒害または凍害と同じである。霜害のことを凍霜害ということもある。
初夏または晩秋に、大陸から寒気が移動性の高気圧に伴って日本上空に来襲し、放射冷却によって明け方異常な低温となることがその原因である。そのときの作物や果樹の若芽の成長の程度で被害は異なるが、だいたい戸外の気温が4℃以下に下がると霜害がおこる。八十八夜(5月2日ごろ)を過ぎれば晩霜害はおこらないとされているが、東北地方や高冷地では5月中旬ころまではその危険があり、北海道では6月におこった記録もある。
霜害を防ぐには、気象官署の霜害注意報などによって、明け方の低温を予知して放射冷却による気温の低下を防ぐ。その方法としては燻煙(くんえん)法(濡(ぬ)れ藁(わら)、古タイヤなどを燃やして煙幕を張る)、加熱法、送風法などがあるが、面積の小さな場合は莚(むしろ)をかけたりする。特殊な方法としては、散水して、作物の表面に氷を張らせる方法なども行われる。
[安藤隆夫]
春秋の降霜のみられるような低温に伴って発生するムギ類,チャ,クワ,果樹などの農作物の被害。移動性高気圧におおわれて,夜間に晴天,無風に近いと地表の放射冷却がさかんとなって低温となる。このようなときの温度分布は地形によってひじょうに変わるので,霜害は局地性が大きく,山間の低地や山すそでは被害を受けやすく,山腹では被害を受けにくい。植物体は一般に,休眠期よりは活動期に,また発育,伸長している器官で氷結しやすい。ムギ類では幼穂,果樹では開花直前のつぼみから幼果の段階,クワでは第3葉の開葉期ごろが霜害にかかりやすい。霜害の防止には,冷気の流入を防ぐために低い囲いや防霜林を作る方法,熱伝導率の低い物質で植物を覆う被覆法,ファンで上層の暖かい空気を冷たい接地層に吹きつける送風法,可燃物を燃やした熱で暖める燃焼法,氷結時に放出される潜熱を利用する氷結法,煙や人工霧で放射冷却を少なくする煙霧法が考えられている。送風法はチャ園やミカン園で広く実施されている。
執筆者:久保 祐雄
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…これを晩霜(おそじも∥ばんそう)という。ときには農作物に大きな被害を与えることがあり,霜害,凍霜害といって農家には恐れられている。なお,凍霜害は気象学上は霜害と同義であるが,農林水産省の作物被害統計では凍害と霜害を合わせたものとしている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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