省エネ法(読み)しょうえねほう

共同通信ニュース用語解説 「省エネ法」の解説

省エネ法

オイルショック教訓を踏まえ、エネルギーの利用効率向上を目的に1979年制定され、時代状況に応じて改正されてきた。エネルギー消費量の多い事業者に使用状況の報告や中長期計画の提出を義務付けているほか、電気製品などのエネルギー消費効率の目標値を示し達成を促す。2023年4月に施行された改正法は電力需要の最適化を大目標に、非化石も含めた全エネルギーの使用合理化、非化石エネへの転換、地域の電力状況に即した機動的な需要調整が柱。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「省エネ法」の意味・わかりやすい解説

省エネ法
しょうえねほう

エネルギーの有効利用のため、一定規模以上の事業者に対し、エネルギーの使用状況等についての定期的な報告、省エネ非化石エネルギーへの転換等に関する取組みの見直しや計画の策定等を求める法律。正式名称を「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(昭和54年法律第49号)というが、略称の「省エネ法」も一般的に用いられている。制定当初の正式名称は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」であったが、2014年(平成26)4月1日から「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」と改題され、さらに、2022年(令和4)の法改正により、エネルギーの使用の合理化の対象に非化石エネルギーを追加したことに伴って、2023年4月1日から現在の名称へと改題された。

[田中 謙 2024年8月16日]

背景

1973年のオイルショックは、イスラエルとアラブ諸国(おもにエジプトシリア)との間の戦争(第四次中東戦争)が発端であったが、アラブ諸国は、イスラエルを支援しているとみなした西側諸国、とくにアメリカに対する報復として、石油の供給を制限するとともに価格を急激に上昇させた(具体的には、石油輸出国機構OPEC〉が石油価格を4倍以上に引き上げた)。燃料価格の高騰は、交通、生産、そして一般消費者の日常生活に多大な影響を与え、インフレーションを引き起こし、その結果、石油に大きく依存していた国々の経済は大混乱に陥った。そのため、オイルショック後、多くの国々が石油依存からの脱却やエネルギーの多様化、省エネ化に取り組むようになったが、その一環として、日本においても、省エネ法が、1973年(昭和48)のオイルショックをきっかけとして、1979年に制定された。省エネ法は、オイルショックで経験した経済的な大混乱を二度と引き起こさないようにと制定された法律であり、この法律が制定されたおもな目的としては、省エネ化(エネルギー効率の向上)、エネルギーの多様化、石油依存からの脱却があげられる。

 その後、地球環境問題の認識が高まり、とくに二酸化炭素の排出による地球温暖化への対応が求められるようになり、1997年(平成9)には気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)において「京都議定書」が採択されたため、1998年に大幅な改正が行われ、トップランナー方式などが導入された。トップランナー方式とは、エネルギー消費機器(自動車、電気機器、ガス・石油機器等)のうち、省エネ法で指定するもの(特定機器)の省エネルギー基準を、それぞれの機器において、現在商品化されている製品のうち、エネルギー消費効率がもっとも優れている機器の性能以上にする方式である。

[田中 謙 2024年8月16日]

内容

本法における「エネルギー」とは、化石燃料、非化石燃料、熱、電気である。「化石燃料」とは、原油、揮発油、重油、可燃性天然ガス、石炭などであり、「非化石燃料」とは、黒液、木材、廃タイヤ廃プラスチック、水素、アンモニアなどである。2022年改正法で追加された「非化石エネルギー」とは、非化石燃料や、太陽熱などの非化石熱、太陽光発電電気などの非化石電気をいう。

 本法が直接規制する事業分野としては、(1)工場または事業所その他の事業場、(2)輸送、(3)建築物、(4)機械器具、の四つである。2008年の改正によって、これまでの工場・事業場単位のエネルギー管理から、事業者単位(企業単位)でのエネルギー管理に規制体系が変更された。これにより、事業者全体(本社、工場、支店、営業所、店舗等)の1年度間のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して1500キロリットル以上であれば、そのエネルギー使用量を事業者単位で国へ届け出て、「特定事業者」の指定を受けることになる。

 特定事業者は、主務大臣に対して中長期計画書および定期報告書の提出が義務づけられる。主務大臣は、提出された定期報告書等の内容を確認し、事業者をクラス分けする「事業者クラス分け評価制度」を実施している。評価は、(1)過去5年間でエネルギー効率(原単位とよばれる)が1%以上改善されたかどうか、(2)業界ごとに設定されたエネルギー効率の基準(ベンチマーク)を達成しているかどうか、という二つの主要な指標に基づいて行われる。そして、評価の結果に基づいて、事業者は「Sクラス」(省エネが優良な事業者)、「Aクラス」(省エネの更なる努力が期待される事業者)、「Bクラス」(省エネが停滞している事業者)、または「Cクラス」(注意を要する事業者)として分類される。Sクラスの事業者は、優良事業者として経済産業省のホームページで公表される。Bクラスの事業者については判断基準の遵守状況、エネルギー消費原単位、電気需要平準化評価原単位の推移等について確認するため、報告徴収、立入検査、工場等現地調査が行われる場合がある。また、報告徴収、工場等現地調査、立入検査の結果、判断基準遵守状況が不十分と判断された場合、Cクラスとなり指導等が行われる。なお、同制度は、「総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会の取りまとめ」(平成27年8月28日)に沿って、省エネ優良事業者を公表することで、事業者に自らの省エネ取組状況の客観的な認識を促すことを目的として実施しているものである。

[田中 謙 2024年8月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例