知らぬが仏(読み)シラヌガホトケ

デジタル大辞泉 「知らぬが仏」の意味・読み・例文・類語

らぬがほとけ

知れば腹も立つが、知らないから仏のように平静でいられる。また、本人だけが知らないで平然としているのを、あざけっていう語。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「知らぬが仏」の解説

知らぬが仏

不愉快な事実を知れば腹も立ち、悩みもするが、何も知らないうちは仏のように穏やかな気持ちでいられる。当人が自分がどんな状況に置かれているのかまったく認識していないので、平気でいるさまを皮肉に評していうことが多い。

[使用例] その学者は、〈略〉物の真相は知らぬ内こそ知りたいものだが、いざ知ったとなると、かえって知らぬが仏ですましていた昔が羨ましくって、今の自分を後悔する場合も少なくはない、私の結論などもあるいはそれに似たものかも知れませんと苦笑して壇を退いた[夏目漱石*彼岸過迄|1902]

[使用例] この女房迂闊にも、良人おっとが若い娘と二人で恋の道行をしていることに、まるで気がついてはいないのだ。知らぬが仏とはこの事だ。本当のことを教えてやったら、たちまち夜叉と変ずることであろう[石川達三*四十八歳の抵抗|1956]

[解説] 事情をまったく知らずに、いつもと同じように過ごしている凡人を「仏」にたとえるのは、抵抗があるかもしれません。仏様は、いっさいの煩悩からだつし、怒ることも悩むこともないとされています。とはいえ、見かけだけみると、似たようなものともいえ、ことわざは「神」も「仏」も遠慮なく比喩にします。江戸初期から使われたことわざで、江戸のいろはかるたにも収録されてよく知られ、今日でもよく使われています。ちなみに、かるた絵札には、地蔵の頭の上にとんぼがとまっている情景が描かれていました。

[類句] 見ぬもの清し

英語〕Ignorance is bliss.(無知至福である)

中国〕眼不見心不煩(見なければ心も休まる)

朝鮮모르면 약이요 아는게 병(知らなければ薬、知れば病)

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