短距離離着陸機(読み)タンキョリリチャクリクキ

デジタル大辞泉 「短距離離着陸機」の意味・読み・例文・類語

たんきょり‐りちゃくりくき【短距離離着陸機】

エストール機

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精選版 日本国語大辞典 「短距離離着陸機」の意味・読み・例文・類語

たんきょり‐りちゃくりくき【短距離離着陸機】

  1. 〘 名詞 〙 上昇性能を高め、五〇〇メートル前後の短い滑走距離でも離着陸できるようにした航空機。STOL。STOL機。エストール機。

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改訂新版 世界大百科事典 「短距離離着陸機」の意味・わかりやすい解説

短距離離着陸機 (たんきょりりちゃくりくき)

離着陸の際の滑走距離が短く,狭い飛行場でも発着できる飛行機。short take-off and landing aircraftを略してSTOL(エストール)ともいう。どの程度の距離で離着陸できればSTOLといえるかは飛行機の大きさや種類によっても違い,明確な決りはないが,中型の輸送機を例にとると,安全上の余裕を含む離着陸に必要な滑走路の長さが,ふつうの輸送機は1200m以上であるのに対して,短距離離着陸輸送機は600m程度でよい。ふつうの飛行機(CTOL(シートール)。conventional take-off and landing aircraftの略)と垂直離着陸機VTOL(ブイトール))の中間的存在といえる。

地上滑走距離を短くするには,低速度で浮揚できるように,翼面荷重を小さくするか,強力な高揚力装置を備える必要がある。また離陸後は急角度で上昇して障害物を越えられるように,機の重量の割合にエンジンの推力を大きくする必要があり,これは離陸滑走時の加速をよくすることにもつながる。軽飛行機など小型低速機はもともと翼面荷重が小さく滑走距離が短いので,高揚力装置の強化で短距離離着陸機になりうる。しかし,中~大型機は翼面荷重を大きくしないと機の寸法が大きくなりすぎ,自重が増えて性能や経済性が悪くなるので,もともとかなり強力な高揚力装置を備えてあり,短距離離着陸機とするには,より強力な推力利用の高揚力装置であるパワードリフト・システムpowered lift systemを使う必要がある。これまで実用されたおもなパワードリフト・システムは,(1)プロペラの後流をフラップに当てて下方へ曲げるプロペラ後流変向,(2)ジェット排気を翼下面からフラップに当てて曲げるEBFexternally blown flapの略),(3)EBFの一種で,ジェット排気を翼上面に流すとフラップに沿って曲がる現象を利用したUSBupper surface blowingの略),(4)ジェット排気を翼内に導き後縁から斜め下向きに吹き出すIBFinternally blown flapの略。ジェットフラップともいう),(5)IBFの一種で,上下2段のフラップの間にジェットを吹き出すオーギュメンターウィングなどである(図)。こうしたパワードリフト・システムを使って低速で飛ぶときは,機の安定性,操縦性が悪くなりがちなので,それを電子装置で自動的に舵を動かして補うほか,尾翼や舵を一般機よりも大きくする必要がある。このほか,戦闘機など小型高速機の短距離離着陸には,エンジンのノズルを横長形の変向式にして翼の後縁におき,斜め下向きに吹き出して揚力を増す方式(変向式ジェットノズル)が考えられている。短距離離着陸機は,離陸後の上昇や着陸の進入が急角度で行えるので,地上に騒音を及ぼす範囲が小さくてすむ特色もある。

パワードリフト・システムを使わない短距離離着陸機は,軽飛行機クラスでは1920年代から試作され始め,第2次世界大戦ではドイツのフィーゼラーFi156シュトルヒ連絡機などが活躍した。今日では各国で小型輸送機に実用例が多く,カナダのデ・ハビランド・ダッシュ7のような50席クラスのものもある。パワードリフト・システムを使った中型以上の短距離離着陸機は60年ごろから各国で試作が盛んになり,73年には日本の新明和PS1対潜飛行艇が部隊運用に入ったが,その後の実用例は少ない。エンジンや高揚力装置を強くする結果,輸送機としては経済性が一般機より低下するなどのためである。
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百科事典マイペディア 「短距離離着陸機」の意味・わかりやすい解説

短距離離着陸機【たんきょりりちゃくりくき】

short take-off and landing aircraftを略してSTOL(ストール,またはエストール)ともいう。離着陸の際の滑走距離がふつうの飛行機に比べて短く,狭い飛行場でも発着可能な飛行機。離着陸距離に明確な決まりがあるわけではないが,一般には必要滑走路長(安全上の余裕も含めて)が600m程度のもの。高揚力装置として,プロペラの後流をフラップによって下方に曲げるプロペラ後流変向,ジェット排気をフラップにあてて曲げるEBF(externally blown flapの略),ジェット排気を翼の後縁から斜め下方に吹き出すIBF(internally blown flapの略),上下2段のフラップの間にジェットを吹き出すオーギュメンターウィングなどのパワードリフト・システムが利用される。
→関連項目C17グローブマスターIII輸送機V/STOL

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「短距離離着陸機」の意味・わかりやすい解説

短距離離着陸機
たんきょりりちゃくりくき
short take-off and landing airplane; STOL

離着陸距離を通常よりも短くした飛行機。 STOLと略称される。 1960年代初期に開発が始まったもので,山の中や不整地など地形が悪くて狭いところでも離着陸できるよう,急角度で上昇または進入し,着陸速度が遅く,滑走路は 150m以下で発着可能なことが条件であった。そのためには揚力を高める必要があり,主翼前縁にフルスパン・スラット,後縁にダブルスロット・フラップなどの高揚力装置を設けたり,ターボプロップ機ではプロペラ後流を下向きに偏流させ,ターボファン機ではジェット排気を下向きに偏流させるなどの方法がとられる。日本では 1980年代に開発が進められた科学技術庁の STOL実験機『飛鳥』が知られている。『飛鳥』は航空自衛隊のC-1輸送機を基本としてファンジェットを取り付け,エンジン排気を主翼上面に吹き出して下向きに曲げる方式で,通常の2~3倍の揚力を発生することができた。 1985年 10月 28日に初飛行,1989年3月まで飛行実験が行なわれた。

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世界大百科事典(旧版)内の短距離離着陸機の言及

【航空機】より

…このほか,回転翼を利用しないで垂直離着陸特性を与えた垂直離着陸機には,離着陸時にジェットエンジンを立てた状態にして上向きの推力を作り出すもの,エンジンは水平のままであるが,排出ノズルの弁を作動して噴出ガスを下方に向けて同じ効果を出すものなどがある。またプロペラ後流やジェットエンジンの噴出ガスを主翼のフラップなどを利用して下方に曲げ,離着陸の際の滑走距離を短くした短距離離着陸機も実用化されている。航空【東 昭】
[国際法]
 航空機は,国際慣習法上,国家または私人の管理に属することにより,公または私の航空機に分類される。…

※「短距離離着陸機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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