改訂新版 世界大百科事典 「石上氏」の意味・わかりやすい解説
石上氏 (いそのかみうじ)
古代の有力氏族の一つ。元来は物部氏を構成した一族で,大和国山辺郡(現,天理市布留町)を本拠とし,その地でヤマト朝廷の剣神を祭る石上神宮の祭祀にあたった。684年(天武13)物部麻呂は連(むらじ)から朝臣(あそん)の姓(かばね)を与えられ,このときから,麻呂の一族は石上を氏とすることになった。691年(持統5)には,大三輪,雀部など17氏とともに,祖先らの〈墓記〉を上進させられた。麻呂は,このあと左大臣にまですすみ,子の乙麻呂も中納言まですすむなど,8世紀前半の政界で活躍がめだった。この乙麻呂の子が,芸亭(うんてい)をつくったことで名高い石上宅嗣(やかつぐ)であるが,宅嗣は775年(宝亀6)朝廷に請うて物部朝臣と氏を旧に復すことを許された。しかし,彼は中納言・中務卿であった779年再び物部朝臣を改め石上大朝臣の氏姓を与えられた。このあとも,石上氏は政界の中央にあって,元日・大嘗会(だいじようえ)には同族の榎井氏とともに楯桙をたてる役目を果たしたが,平安京への遷都以後はしだいに衰微した。
執筆者:門脇 禎二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報