[ 三 ]は、上代の確実な例は少ないが、中古の文献では、老幼男女、貴賤にかかわらず、広く見られる。ただし、「源氏」では、発話者は年少の男子に偏り、成人男性の場合は愛情をよせる女性に対して使われることが多いなど、親密な人間関係を基底にしていることが特徴という。しかし、「今昔」などでは主として女性が使う語となっており、さらに時代が下ると、「日葡辞書」や「ロドリゲス日本大文典」が「帝王(天皇)の自称」と記しているように、天皇またはこれに準ずる人の自称代名詞として用いられている。「まる」という形の方が多くなってくるのもこの頃からである。
合字(ごうじ)の「麿」とも書く。上代、男子の呼称として単独で用いられ、あるいは接尾語として人名のあとにつけることも多かった。一人称代名詞としての用法は、主として平安時代以後に現れ、年齢、男女、貴賤(きせん)にかかわらず広く用いられた。また、動物などの下につけ、「いなごまろ」「さるまろ」などと親愛の意を表すこともある。中世以後「まる」とも転じたが、皇族や貴人の一人称代名詞として用いられたこともある。
[藁科勝之]
…これは奈良時代の高官であった中納言阿倍朝臣広庭と同名である。大和時代の人名は男女とも複雑で無定則的であるけれども,接尾語として彦(ひこ),比売(ひめ)(姫,媛,比咩),郎子(いらつこ),郎女(いらつめ),足(たり),比登(ひと),女(め),戸弁(とべ),麻呂,雄(お)(男),子(男女ともに),君(男女ともに)等が名に付される例が多かった。複雑,無定則的であるから後代に姿を消した名が少なくない。…
※「麻呂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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