日本大百科全書(ニッポニカ) 「石炭化」の意味・わかりやすい解説
石炭化
せきたんか
coalification
太古の樹木が地中に埋もれ、地熱や地圧など地質学的な作用により、脱水、脱炭酸、脱メタン反応が進むことによって炭素含有量が増大し、酸素含有量が減少する過程を石炭化という。
古くは古生代石炭紀(3億6700万年前から2億8900万年前まで)から中生代白亜紀(1億4300万年前から6500万年前まで)に、現在より高い気温と湿度および炭酸ガス(二酸化炭素)濃度の下にシダ類、トクサ類、セキショウ類などの隠花植物の大木が繁茂し、新生代第三紀(6500万年前から170万年前まで)、第四紀(170万年前から1000年前まで。植物の堆積(たいせき)は100万年以前と推定される)では現代と同じ針葉樹、広葉樹などの顕花植物の大森林があったものと推定されている。これらが湿潤な浅い沼地などで長期間堆積したり、あるいは定期的に洪水などで湖とか海などに流されて堆積したりすることによって、まず石炭層の根源がつくられる。こうした初期堆積物は水中における嫌気性微生物の作用を受け、ある程度の生物化学的変化をする。ついで、しだいに上部に堆積する無機岩石により地中深く埋没し、それとともに高い地圧により圧縮され緻密(ちみつ)化し、地温も上がって熱分解をおこす。これが石炭化反応である。石炭化度は地質学的な堆積環境にもよるが、一般的に地熱や地圧の高さとその期間により左右され、温度が低くてもその温度を受けていた期間が長い場合や地圧が高い場合には石炭化は進み、期間が短くても温度が高ければやはり石炭化は進む。日本のように地下温度がマグマなどの影響を受けて比較的高いときは、その根源植物が大部分新生代第三紀に属するにもかかわらず比較的に石炭化度の高い石炭を産する場合もある。
石炭化反応の学説は二つに分かれている。一つはリグニン説であり、植物を構成している二大成分の一つであるセルロースは初期生物化学的作用に弱く速やかに分解し、リグニンのみが残って石炭となったとする。ほかの一つはセルロース説で、これはセルロースも石炭化にあずかっているとするものである。まだいずれとも断定できない。
[大内公耳・荒牧寿弘]