硝酸ウラニル(読み)しょうさんウラニル(その他表記)uranyl nitrate

改訂新版 世界大百科事典 「硝酸ウラニル」の意味・わかりやすい解説

硝酸ウラニル (しょうさんウラニル)
uranyl nitrate

化学式UO2(NO32。UO2(NO32・6H2Oの6水和物が最も普通であり,ほかに無水和物,1,2,3水和物が知られている。6水和物は市販品がある。UO3またはU3O8硝酸に溶かして濃縮すると,黄色斜方晶系柱状または板状晶の6水和物が得られる。構造は,O-U-Oに対し垂直な面内に二つのNO3⁻がキレートし,二つのH2Oが配位した六方双錐形の錯体をもつ[UO2(NO32(H2O)2]・4H2Oである。黄緑色の強い蛍光を発する。比重2.80。乾燥空気中では徐々に風解,湿った空気中では潮解する。水100gに対する溶解度52.0g(15℃),67.3g(50℃)。エーテルアセトンエチルアルコールなどに溶け,二硫化炭素,ベンゼンリグロインなどには溶けない。結晶を熱すると60.2℃で結晶水に溶けて水溶液となるが,そのまま熱しつづけると3水和物となり,80℃で2水和物,120℃で1水和物となる。さらに熱すると160℃で無水和物となるが,UO3が混入してきて純粋なものは得られない。純粋なUO2(NO32を得るには,金属ウラン四酸化二窒素ニトロメタン混合物に溶かして得られる黄色結晶UO2(NO32・N2O4を真空中165℃に熱する。無水和物は黄色の無定形粉末。3水和物,2水和物はいずれも黄色結晶で,緑色の蛍光を発する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸ウラニル」の意味・わかりやすい解説

硝酸ウラニル
しょうさんうらにる
uranyl nitrate

ウラン(Ⅵ)に酸化物イオン(オキシド配位子)2個が配位して生成するジオキシドウラン(Ⅵ)、別名ジオキシドウラン(1+)イオンUO2+硝酸塩組成式はUO2(NO3)2式量394.09。ウラニルはUO2+イオンの慣用名であり、正式名称ではない。無水和物のほかに一、二、三、六水和物があり、六水和物が代表的な六価ウランの塩である。六水和物は黄色柱状または板状結晶で黄緑色の強い蛍光を呈する。60.2℃で自身の結晶水に溶ける。医薬、ガラス工業、写真工業などに用いる。

[岩本振武]


硝酸ウラニル(データノート)
しょうさんうらにるでーたのーと

硝酸ウラニル六水和物
  UO2(NO3)2・6H2O
 式量  502.1
 融点  60.2℃
 沸点  118℃
 比重  2.742
 結晶系 斜方(直方)
 溶解度 54.4g/100g(水20℃,無水和物として)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「硝酸ウラニル」の解説

硝酸ウラニル
ショウサンウラニル
uranyl nitrate

UO2(NO3)2(394.04).硝酸に酸化ウラン(Ⅵ)または八酸化三ウランを溶解し,濃縮すると六水和物が得られる.式量502.1.そのほか,無水および一,二,三水和物が知られている.六水和物は黄色の結晶で黄緑色の強い蛍光を発する.融点60.2 ℃,沸点118 ℃.密度2.807 g cm-3(13 ℃).構造はO-U-O軸に垂直な面内に二つの硝酸イオンと二つの水分子が配位しており,[UO2(NO3)2(H2O)2]・4H2Oと書くこともできる.水に対する溶解度は無水物として54.4 g/100 g 水(20 ℃).エーテル,アセトン,エタノールなどに可溶.湿った空気中では潮解し,60.2 ℃ で融解して黄色の液体になる.黄緑色の蛍光を発する.エーテルを含む溶液から得られた硝酸ウラニルは,自然にあるいは機械的刺激や熱によって爆発する.イエローケーキから出発するウラン燃料製造過程の中間物.かつては,医薬,窯業(うわぐすり),ガラス着色などに用いられた.毒劇法劇物指定,経口摂取・吸入により毒性.[CAS 10102-06-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硝酸ウラニル」の意味・わかりやすい解説

硝酸ウラニル
しょうさんウラニル
uranyl nitrate

化学式 UO2(NO3)2 。6水和物は柱状か板状の黄色結晶。砕いたり,こすったりすると著しい摩擦発光を示し,ときに爆発を起す。融点 60℃。水,アルコール,エーテルに易溶。水溶液は酸性を呈する。エーテル溶液を太陽光にさらしたまま放置すると爆発を起すことがある。写真用補力液,陶磁器着色剤,分析用試薬などに用いられる。

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