硫安工業(読み)りゅうあんこうぎょう(英語表記)ammonium sulfate industry

百科事典マイペディア 「硫安工業」の意味・わかりやすい解説

硫安工業【りゅうあんこうぎょう】

硫酸アンモニウム硫安)からなる窒素肥料を生産する工業。1913年ハーバー=ボッシュ法確立後急速に発展。日本でも当初石灰窒素からの変成硫安によったが,1921年カザレー法により合成硫安の生産を開始した。しかし,石油化学の導入とその急成長により1950年代半ばには肥料工業そのものが化学工業の中心的地位を去ったことと,塩安や尿素が窒素肥料に用いられ始めたことで生産が漸減。1958年には260万tあった硫安生産高は1996年は171万tで,以後も減少傾向にある。さらに産油国の台頭,輸入肥料の増大,国内肥料消費の伸び悩みなどの問題を抱えている。→肥料工業

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫安工業」の意味・わかりやすい解説

硫安工業
りゅうあんこうぎょう
ammonium sulfate industry

硫酸アンモニウムを生産するアンモニア系窒素肥料工業の一つ。しかし普通,アンモニア合成から,アンモニア系の窒素肥料として硫安のほかに,硝安,尿素,塩安,化成肥料などを製造しており,高度の化学技術と巨大な設備をもつ窒素工業またはアンモニア工業の形態をとっている。空中窒素固定法の発明 (1904) によって発達した。日本では 1910年に石灰窒素から変成硫安を生産し,24年に合成アンモニア法によって硫安を製造,工業化の道が開かれた。その後発展を続け,1930年代初め,国際的な硫安の生産過剰に悩まされたが,35年頃はドイツに次いで,世界第2位の生産量を誇った。第2次世界大戦後,食糧増産時代の花形工業として立直り,49年には戦前の水準を回復した。しかし,硫安は土質を酸性化する難点があるところから尿素の比重が増し,高度化成肥料も増加したため,その地位は低下している。また近年は公害問題のため,合成硫安は 72年以後製造が中止され,化学繊維などの生産で使用したあとのアンモニアや硫酸の廃液でつくる回収硫安や副生硫安が主流になっている。

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