2種類以上の肥料または肥料原料を使用し,これに化学的操作や造粒操作を加えて製造され,窒素,リン酸,カリのうち2成分以上を保証し,その合計量が15%以上である肥料をいう。その原料の大部分は化学肥料であるが,有機質肥料などを原料として含むものもあり,有機化成などと呼ばれている。2種類以上の肥料が単に混合されたものは配合肥料である。これらは法律上は第1種複合肥料として統合されている。窒素,リン酸またはカリの合計量が30%未満のものを普通化成肥料(普通化成)または低度化成肥料(低度化成)と呼び,30%以上のものを高度化成肥料(高度化成)と呼んでいる。
日本ではじめて生産された化成肥料は,1919年に製造されはじめた大日本特許肥料による石灰窒素を主原料とした〈トモエ特許肥料〉である。その後外国からも〈アンモホス〉〈ロイナホス〉などが輸入されている。大日本人造肥料は28年より化成肥料と命名した〈みずほ肥料〉〈ときわ肥料〉を発売しだした。化成肥料は第2次大戦中は生産縮小したが,55年ころより急速な生産量の増大が認められるようになった。80年度には449万tが生産され,化成肥料中の肥料成分量は,全消費肥料中の成分量に対し,窒素で約60%,リン酸で約70%,カリで約85%にも及んでいる。また化成肥料中の高度化成の占める割合も急増し,約70%を占めている(1994年度の生産量は269万t)。
化成肥料は主要原料の種類に応じて,硫安系,尿素系,塩安系,硝安系,リン安系,石灰窒素系普通(高度)化成などに区別され,それぞれの性質に応じ,適用作物,用法などに特徴をもたしている。また添加成分の形態からも区別され,硝酸化成抑制剤入り化成肥料はDd(ジシアンジアミド),AM(2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジン),DCS(ジクロロフェニルサクシナミド酸)などを添加することにより,土壌中の亜硝酸菌の活動を抑え,土壌によるアンモニアの保持時間を長びかせることによる肥効の持続を図ったものである。有機質入り化成肥料は,有機質肥料や各種油かす,皮くず,乾糞(かんぷん),蒸製毛粉,植物微細繊維などの有機物を含んでいるが,その含有率は窒素でみた場合,全窒素の1%以下程度のものが多い。そのほか,マグネシウム,マンガン,ホウ素,農薬入りの化成肥料もあり,また鉄,銅,亜鉛,モリブデン入り化成肥料も葉面散布剤などを中心に生産されている。
化成肥料は単肥に比べて種々の利点をもっている。(1)各種の肥料成分が均一に混合しているので,施肥の均一性が高まる。(2)運搬や施肥における経費,労力が節約できる。(3)肥料成分の速効性,緩効性を適当に組み合わせることにより肥効の遅速効性を調節できる。(4)土壌別,作物別に適合した肥料をあらかじめ用意することができる。(5)粒状化により吸湿,固結が防止でき,また大小,硬軟など種々の粒にすることによる肥効の調節も可能になる。
執筆者:熊沢 喜久雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
肥料原料を単に機械的に配合ないしは混合したものではなく、2種以上の肥料を原料として化学的操作により製造したもので、肥料三要素である窒素、リン酸、カリ(カリウム)のうち2要素以上を含むものをいう。
化成肥料には、
(1)一般に成分含有量が高く包装、運搬などに利点がある
(2)肥料反応が中性化され、肥料成分以外のむだな副成分が少なく土壌を悪変させる度合いが少ない
(3)適切な成分比の化成肥料を用いることにより、バランスのとれた施肥が容易に行える
などの特長があることから、第二次世界大戦後その使用量は急速に伸びた。現在流通している複合肥料の大部分を占めている。
化成肥料に含まれる肥料三要素の合計成分率が30%以上のものを高度化成、30%未満のものを低度化成とよび区別するが、年々化成肥料の高度化が進んでいる。低度化成は窒素成分として硫安を、リン酸成分として過リン酸石灰を、カリ成分としては塩化カリを加えて配合し造粒したものがもっとも普通の製品であるが、硫安のかわりに石灰窒素または尿素を、過リン酸石灰のかわりに溶成リン肥を用いたものなど多くの種類がある。高度化成は過リン酸石灰のかわりに湿式法でつくったリン酸にアンモニアを加えて反応させ成分含量を高めたものがもっとも多い。このほか酸化マグネシウム(苦土)、マンガン、ホウ素などの作物に必要な微量要素を特別に添加した化成肥料も製造販売されている。
[小山雄生]
『浪江虔著『全化成肥料早わかり』(1955・農山漁村文化協会)』▽『藤原彰夫・園田洋次著『化成肥料に関する研究――特に燐酸より見て』(1961・養賢堂)』▽『日本化成肥料協会編・刊『農業と化学肥料の役割』(1996)』▽『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』
肥料3要素(N,P,K)のうち二つまたはすべてを含み,これらの間に化学結合をもつように化学的操作により製造した多成分化学肥料.粒状である.特徴としては,成分が高濃度,かつ諸成分が肥効上適当な形になっており,化学的中性を保ちつつ吸湿性であるため,容器の腐食を防止できる.含有成分総量により分類される.低度化成肥料:N,P,Kの有効成分約20%.過リン酸石灰を中心に硫安,尿素などをまぜたもの.
N:P:K = 8:8:7.
高度化成肥料:アンモニア,リン酸液を用い有効成分を高めたもので,N,P,Kの有効成分35% 以上.
N:P:K = 14:14:14.
そのほか,尿素と石灰窒素を含めて無機質の肥料と硫酸,リン酸,アンモニアなどを混合反応させてつくったもので,製法によって次のように分類されている.
(1)配合式化成肥料:窒素肥料,リン酸肥料,カリ肥料原料を配合し,アンモニア水を加えて造粒子製品としたもの.
(2)むろ式化成肥料:硫酸,リン鉱を原料とし,むろでリン鉱を分解,Ca(H2PO4)2およびCaHPO4として植物が吸収しやすく,さらに窒素肥料とカリ肥料を加えたもの.
(3)合成式化成肥料:硫酸とリン鉱石を原料とし,アンモニアとリン酸の中和反応を主体としてリン安をつくり,これに窒素肥料とカリ肥料を加えたもの.硫リン安系,リン安系でそれぞれ約6種類ある.
[別用語参照]配合肥料
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…窒素,リン,カリウムの肥料3要素のうち2成分以上を含有する肥料を総称していう。これに対し1成分のみを含む肥料は単味肥料(単肥)というが,近年は複合肥料の方が需要が多い。全肥料消費量のうち,複合肥料の形で消費される割合を複肥率といい,窒素肥料,リン酸肥料,カリ肥料それぞれの日本での複肥率は1961年には44%,62%,48%であったが,83年にはそれぞれが80%,78%,80%と増加しており,複合肥料の需要が増大していることがわかる。…
※「化成肥料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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