最新 心理学事典 「社会的影響」の解説
しゃかいてきえいきょう
社会的影響
social influence
このように社会的影響の研究領域は広範囲にわたるが,対人関係,組織内行動,広告,マーケティング,健康行動,環境配慮行動など,実社会における重要な社会的行動とかかわるため,応用的研究も盛んである。プラトカニス(Pratkanis,A.R.,2007)は,これまで研究の対象とされてきた社会的影響の戦術を107個あげ,それらを四つのカテゴリーに分類している。すなわち,説得環境の事前操作,ターゲットとの関係作り,メッセージの確信的提示,感情による説得である。同様に,チャルディーニCialdini,R.B.(2001)は社会的影響の基本原理を,返報性,コミットメント,社会的証明,好意,権威,希少性の六つにまとめており,これらは,配偶者や地位を巡る競争を有利に進めたり,他者と緊密な関係を構築・維持するうえで重要な役割を担うため進化の過程で選択されてきたものと仮定されている(Sundie,J.M.,Cialdini,R.B.,Griskevicius,V.,& Kendrick,D.T.,2006)。
社会的影響の研究は,影響を与える側の視点から行なわれることが圧倒的に多いが,近年,不利な立場におかれる受け手の心理や影響への対抗手段を検討する研究も行なわれるようになり,こうした研究の高まりを受けて2006年には専門誌『社会的影響Social Influence』が創刊された。 →社会的勢力
〔安藤 清志〕
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