日本大百科全書(ニッポニカ) 「神島二郎」の意味・わかりやすい解説
神島二郎
かみしまじろう
(1918―1998)
政治学者。東京都生まれ。1947年(昭和22)東京帝国大学卒業。国会図書館勤務、明治大学助教授を経て59年立教大学教授となる(84年に退官、のち名誉教授となる)。第二次世界大戦中フィリピン戦線に従軍した経験をもち、復員後丸山真男(まさお)、柳田国男(やなぎたくにお)に師事。自らの従軍体験を基礎に「天皇制ファシズム」を支えた庶民の意識分析をテーマとし、さらに「天皇制ファシズム」を生んだ近代日本の庶民意識の構造的分析に取り組んだ。代表作の『近代日本の精神構造』(1961)では庶民のもつ「家」意識=「家」信仰こそが近代日本さらには「天皇制ファシズム」を基底から支えるものであると指摘した。神島は師事した丸山政治学と柳田民俗学を「架橋」した「神島学」を創出したといわれる。ほかにも『常民の政治学』(1972)、『磁場の政治学』(1982)など多数の著書を発表した。
[伊藤 悟]
『『近代日本の精神構造』(1997・岩波書店)』▽『『常民の政治学』(講談社学術文庫)』▽『『磁場の政治学』(1982・岩波書店)』