改訂新版 世界大百科事典 「神道大意」の意味・わかりやすい解説
神道大意 (しんとうたいい)
室町時代の吉田神道の書。吉田兼俱(かねとも)(1435-1511)の著。唯一宗源神道(吉田神道)の大成者兼俱はその神学確立のために,祖先の名に託し《唯一神道名法要集》(托卜部兼延),《唯一神道大意》(托卜部兼直)などを記しているが,それらとともに彼の神学・思想をみる上の重要書。本書は尊経閣文庫本の奥書より知られるように,1486年(文明18)前将軍足利義政に進めるために記したものである。まず〈夫(それ)神とは天地に先(さきだつ)てしかも天地を定(さだめ),陰陽に超て然も陰陽をなす。天地に在ては神と云,万物に在ては霊と云,人に在ては心という。心とは神也。故に神は天地の根元也。万物の霊性也。人倫の運命也〉とのような本文を記したあと,天神七代,地神五代,定日本国中大小神社鎮座事,定二十二社次第事,三十番神由来事を記し,最後に兼俱の跋を付している。
なお書名の〈神道大意〉とは神道の大体の意味を簡単に述べた書との意味であることから,他にも同名の書が多い。すなわち吉田神道内でも兼夏,兼敦以下の同名書があり,垂加神道に属する玉木正英,若林強斎のそれ,復古神道派の富士谷御杖,権田直助(ごんだなおすけ)らのそれ,儒家神道の熊沢蕃山のそれ,雲伝神道の天如のそれと多くあり,またそれらの注釈書も多く出されている。吉田兼俱ほか吉田神道者のそれは,吉田叢書第1編に所収(1940年吉田神社編)。
執筆者:鎌田 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報