積極財政派(読み)せっきょくざいせいは

知恵蔵 「積極財政派」の解説

積極財政派

経済と財政の関係において、財政(国家)が積極的に歳出を増やして、経済(市場)を活性化すべきだとする立場。経済学の系譜では、ケインズ主義に連なる。ケインズは、1930年代の世界不況期に、政府が積極的に公共事業投資を行って、有効需要を喚起することを提唱した。戦後、アメリカをはじめとする自由主義各国は、ケインズ政策を採用して豊かな社会を実現したが、税収を上回る歳出を国債発行で補充するため、財政収支赤字に苦しむことにもなった。日本では、バブル崩壊後の90年代の不況期にも、景気対策の柱として公共投資を行ったが効果はなく、市中銀行の不良債権は増大するばかりであった。この「失われた10年」を経て、2001年に成立した小泉政権は、「改革なくして成長なし」という日本経済の構造改革スローガンに掲げて、道路公団郵政の民営化や、公共事業の予算を削減して国民に「痛み」を強いたが、不良債権を縮小するなど一定の成果を上げた。小泉政権後の安倍、福田政権も、経済政策では基本的に小泉改革継承を謳っていた。08年9月の自民党総裁選では、経済政策をめぐって、「財政再建派(増税派)」「上げ潮派(構造改革派)」「積極財政派(バラマキ派)」の三つに分かれた。麻生太郎が「積極財政派(バラマキ派)」の候補として、財政出動による景気対策を主張して地方票の95%を獲得し、小泉改革の継承を掲げる「上げ潮派」や、財政の引き締めを志向する「財政再建派」に圧勝した。この結果、「小泉改革は終焉した」とも言われる。だが、麻生圧勝の背景には、長期的には構造改革が必要と考えている経済学者やエコノミストも、短期的には財政出動を認めざるを得ないほど、アメリカのサブプライムローン問題に発する金融危機が世界的に深刻であるという現実がある。

(高橋誠 ライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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