使われていない住宅(空き家)や土地(空き地)の情報をインターネットで公開し、利用希望者に紹介する仕組み。人口減少に伴い、全国で増え続ける空き家を減らし、有効活用して地域活性化につなげるねらいがある。「空き家バンク」のほか、「移住情報バンク」「住まいネット」など名称は多様である。空き家や空き地の所有者に物件情報を登録してもらい、専用サイトに物件の面積、間取り図、築年数、価格、最寄り駅、外観写真、付属設備、学校や病院などの周辺情報を掲載し、地方移住(定住)のほか、観光・イベント施設や民泊施設としての利用を促す目的もある。地方自治体が運営する空き家バンクと、地方の情報を一元化した全国版空き家バンクがある。
空き家の増加は、税収減、市街地の空洞化を招くほか、倒壊や火災の危険性が高まり、犯罪者や不審者による悪用、ごみ投棄、雑草放置などで治安、衛生、生活環境、景観などが悪化するおそれもある。総務省の調査では、全国の放置された空き家は、1998年(平成10)の約182万戸から2018年(平成30)に約349万戸に増え、2030年には470万戸に増えると見込まれる。過疎が進む地方では、自治体が主導し、1990年代からネットで空き家を紹介する空き家バンクの利用が始まり、自治体が不動産団体などに委託するケースを含め、2023年(令和5)には都道府県や市区町村など1000弱の自治体が参加し、約1万4300の物件が成約済みである。空き家バンクのなかには、所有者が不動産業者などに一定額を払って登録物件の管理を委託する例もある。ただ、地方版空き家バンクは紹介物件数が少なく、対象地域も限られるため、利用率が低いという難点があった。このため国は2015年、「空家対策特別措置法」(正称「空家等対策の推進に関する特別措置法」平成26年法律第127号)を施行し、問題のある空き家(「特定空家等」)の解体・撤去などを助言・指導・勧告・命令できるようにしたほか、2017年から全国共通の空き家バンクのサイト運用を開始した。公募により選定した民間不動産サービスのLIFULL(ライフル)とアットホームの2社へ運営を委託し、全国の空き家情報を一つにまとめることで、地方ごとにばらばらだった表示形式などを統一し、使い勝手を向上させた。国は全国版の運用、未設置自治体への導入促進策、活用モデル事業などで、2030年時点での放置された空き家数(賃貸・売却用などを除く)を400万戸程度に抑える目標を掲げている。
[矢野 武 2023年9月20日]
(若林朋子 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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