日本大百科全書(ニッポニカ) 「立てばんこ」の意味・わかりやすい解説
立てばんこ
たてばんこ
灯籠(とうろう)の形に組み立てた紙細工玩具(がんぐ)。漢字では「立版行」「立版古」をあてたりする。「はんこ」は版(摺物(すりもの))にしたものの意味で、起こし絵、組み立て絵ともいう。紙を張った木組みで角行灯(かくあんどん)の囲いをつくり、その中に摺物の絵草紙を裏打ちして切り抜いた人物や建物、樹木などを、立て起こして貼(は)り付け、芝居の舞台面の模型のようなものをつくる。題材は義士討入り、鬼退治などの演劇場面が多く、前面にろうそくや豆ランプであかりをつけて飾った。熊本県山鹿(やまが)市の山鹿神宮の神事に登場する、切り紙細工の山鹿灯籠などを祖型にして生まれたものらしい。
江戸時代、寛政(かんせい)年間(1789~1801)天満(てんま)天神祭りの風景などを題材にしたものが商品化され、京、大坂の土産(みやげ)物として売り出された。のちに江戸に伝わり、立てばんこなどの名で発達し流行した。幕末から明治期にかけて人気のあった「おもちゃ絵」の一種にもなった。おもちゃ絵は子供向きの一枚刷りの絵草紙のことで、これは絵草紙を組み立てたもの。古くからある盆祭り行事の灯籠人形などの作り物を玩具化した作品である。子規(しき)句集(1896)に、「おこし絵に灯をともしけり夕涼」とあり、夏の夜の子供の細工物遊びとして明治末期まで流行した。1923年(大正12)の関東大震災のころに姿を消したが、最近では児童雑誌の付録の工作玩具などに応用されている。
[斎藤良輔]