改訂新版 世界大百科事典 「竜飛御天歌」の意味・わかりやすい解説
竜飛御天歌 (りゅうひぎょてんか)
朝鮮の李朝建国叙事詩。鄭麟趾らの撰。1447年刊,木版本。10巻,125章から成る。初章1聯,終章3聯以外は2聯で,対になったハングル歌,そして漢詩訳が続く。前聯は中国の故事,後聯は朝鮮の事跡で建国の正当性を主張する。世宗(せいそう)前6代祖の事跡を述べるが,太祖(李成桂)に最も詳しい。110章以降は後代の王への訓誡。ハングル(1446年訓民正音として制定)による最初の資料で,注は漢文で書かれて長く,高麗末から李朝初期の中国東北部や日本に関する記事もあり,文学・語学・歴史的にも重要である。朝鮮,満州の地名,人名のハングル表記もある。《世宗実録》にハングルの歌詞があり,宮廷の宴饗で歌われた。書名は《易経》にちなむ。原刊本らしき残巻があるが,一般には1612年刊本による。
執筆者:藤本 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報