筋ジストロフィー(読み)キンジストロフィー

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

筋ジストロフィー

遺伝子の異常で筋肉が衰えていく病気。最も多いデュシェンヌ型は男児で約3500人に1人が発病する。症状が軽いタイプもあるが、デュシェンヌ型は乳児期から歩き方などに症状が出始め、成人期に歩行や呼吸が難しくなり、死に至ることもある難病。iPS細胞から効率的に筋肉の細胞をつくり、筋ジストロフィーを再現する技術を京大が今年4月に発表した。

(2013-05-09 朝日新聞 朝刊 5総合)

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家庭医学館の解説

きんじすとろふぃー【筋ジストロフィー Muscular Dystrophy】

◎徐々に筋力が低下する
[どんな病気か]
 筋ジストロフィーは遺伝性で、進行性に(徐々に)筋力が低下してくるミオパチー(筋肉疾患)です。筋ジストロフィーは、遺伝形式によって3種類に分類され、さらにいくつかの病型に分かれます(表「筋ジストロフィーの分類」)。
 病型ごとに障害される筋群が異なり、症状がちがいますが、共通する症状は、進行する筋力の低下です。
 性染色体劣性遺伝型(せいせんしょくたいれっせいいでんがた)は原則として男性のみに、常染色体劣性遺伝型(じょうせんしょくたいれっせいいでんがた)と常染色体優性遺伝型(じょうせんしょくたいゆうせいいでんがた)は男女ともにおこります。また、常染色体劣性遺伝型は、血族結婚でおこることが多いものです。
 性染色体劣性遺伝病のデュシェンヌ型は、子どものころに発症し、20歳代で死亡する悲惨な病気であることからもっとも有名で、筋ジストロフィーといえば、ふつう、この病気のことをさします。
[症状]
 ふくらはぎの筋肉が異常に太くなるのに筋力が弱くなる状態を仮性肥大(かせいひだい)といい、デュシェンヌ型の特徴的な症状ですが、良性型といわれるベッカー型でもみられます。
 おもな病型の症状の特徴を、表「筋ジストロフィーの分類」にまとめてあります。
◎遺伝子の異常や欠損が原因
[原因]
 近年、筋ジストロフィーを発症させる異常遺伝子が見つかり、この異常遺伝子がつくるジストロフィンという異常なたんぱく質も発見されました。このたんぱく質が、筋肉細胞の膜(まく)の内側に存在するのを発見したのは、日本の研究者です。
 その後、このたんぱく質と関連する膜たんぱく質がたくさん見つかり、そのうちのいくつかの遺伝子の異常や欠損によっていろいろな型の筋ジストロフィーが発症することがわかりつつあります。もっとも重症なデュシェンヌ型も、良性型のベッカー型も同じ遺伝子の異常でおこるのですが、後者では遺伝子の障害の性質が異なり、軽症となります。
 デュシェンヌ型とベッカー型の患者さんの家系を調査したところ、遺伝子の一部がかけているケース(欠失(けっしつ))が50%、遺伝子の一部が複数あるケース(重複)が10%あることがわかりました。残りの40%は、1つの核酸(かくさん)がちがう核酸に置き換えられているケース(点変異(てんへんい))や、関係のない余分な核酸が存在するケース(挿入(そうにゅう))などの異常であることがわかってきました。
 筋緊張型だけは、これらとはちがう特殊型ですので、「筋緊張性(強直性)ジストロフィー」で解説します。
 筋ジストロフィーは、遺伝でおこることが多いのですが、突然変異でおこるケースもかなりあります。
 これまで、デュシェンヌ型やベッカー型の3分の1は突然変異でおこるとされてきましたが、このことは実際の調査でも確認されました。
 筋ジストロフィーを遺伝性の病気と決めつけ、患者さんや家族を差別することのないようにしたいものです。
[検査と診断]
 筋肉のCT撮影、血液中のCK(クレアチンキナーゼ(「CK(クレアチンキナーゼ)〔CPK(クレアチンホスホキナーゼ)〕」))の測定、筋電図検査、筋生検(きんせいけん)、遺伝子解析など、いろいろな検査が行なわれます。
◎副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが有効
[治療]
 遺伝子治療が根本的な治療法ですが、まだ、実用化の段階ではありません。
 副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)の服用が有効なことが最近、わかりました。専門医(神経内科の医師など)と相談し、服用量を決めてもらいましょう。また、リハビリテーションもたいへん有効な治療法ですので、受けることを勧めます。
 合併症として、心不全や呼吸不全がおこることがあります。とくに呼吸不全の頻度は高く、デュシェンヌ型では80%の人が人工呼吸器による治療が必要になります。定期的に専門医の診察を受け、全身状態をチェックしてもらうことが重要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

きん‐ジストロフィー【筋ジストロフィー】

〘名〙 (ジストロフィーはdystrophy 「栄養失調」の意) 骨格筋の進行性萎縮と筋力低下を特徴とする筋肉の病気。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

筋ジストロフィー
きんジストロフィー
Muscular dystrophy
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 筋ジストロフィーの定義は、遺伝性で進行性の筋力低下を示すミオパチー(筋肉病)です。さまざまな疾患が含まれており、近年、遺伝子異常が明らかにされ、研究が急速に進歩しつつある分野です。筋ジストロフィーは、その遺伝形式で表4のように分類されます。

 性染色体劣性遺伝病(せいせんしょくたいれっせいいでんびょう)であるデュシェンヌ型は小児期に発症し、20代で死亡する悲惨な疾患であることから最も有名で、一般に筋ジストロフィーといえばこの疾患を指します。ふくらはぎが異常に太くなりますが、力は弱いことから仮性肥大型とも呼ばれます。

 デュシェンヌ型は男性のみがかかる病気ですが、常染色体性(じょうせんしょくたいせい)疾患である肢帯型(したいがた)筋強直型(きんきょうちょくがた)は両性に発症します(表4)。

原因は何か

 1986年にデュシェンヌ型の遺伝子異常が見つかり、この遺伝子がつくる蛋白質(ジストロフィン)も明らかにされました。この蛋白質は、正常では筋肉細胞の膜の内側に存在しています。

 その後、ジストロフィンと関連している膜蛋白質がたくさん見つかり、それらのうち、いくつかの蛋白質の異常や欠損により、筋細胞中のいろいろな筋ジストロフィーが発症することがわかりました。さらに、その後の研究発展により、ほかの場所にある蛋白質の異常でも筋ジストロフィーを発症することもわかってきました。

 デュシェンヌ型と良性型のベッカー型は、同じ遺伝子の異常で発生します。後者では、遺伝子の障害の性質が違うため軽症となります。

 遺伝子の異常は、筋強直型を除けば遺伝子の一部が欠けたり(欠失)、遺伝子が余分にあったり(重複)、一部が置き換えられるなどの異常がみられます。ただし、顔面肩甲上腕型(がんめんけんこうじょうわんがた)は違うメカニズムで発症するようです。

 肢帯型は従来、常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)疾患とされてきましたが、常染色体優性(ゆうせい)型も発見されました。最近は先天型の遺伝子異常の研究がさかんに行われています。

 筋強直性ジストロフィーは特殊型ですので、あとの項で説明します。

症状の現れ方

 症状は病型ごとに変わりますが、共通の症状は進行性の筋力低下です。病型ごとに障害される筋群が異なります。

治療の方法

 デュシェンヌ型では、歩行可能時期には副腎ステロイドホルモン(プレドニゾロン)が有効であることが判明しました。投与量については専門医と相談してください。デュシェンヌ型の治療としてエクソン・スキッピングという遺伝子治療が始まることになり、期待されています。またリードスルー薬というまったく異なった作用の薬(PTC124〈アタルレン〉)も市販される予定で、遺伝子治療の進歩にはめざましいものがあります。リハビリテーションも有効な手段ですから受けられることをおすすめします。

 合併症として、心不全や呼吸不全があります。とくに後者は頻度が高く、デュシェンヌ型では80%の患者さんで人工呼吸器治療が必要になります。人工呼吸といっても最初から気管切開を行うのではなく、まず鼻マスク式呼吸器を使いますので手軽で簡単に治療が可能です。心不全(しんふぜん)の治療も進歩してきました。専門医を定期的に受診し、全身状態のチェックを受けることが重要です。

 子どもでは教育の面での問題があるため、ぜひ専門医に相談してください。

石原 傳幸


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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