筋肉の収縮とともに発生する活動電位を波形として観測、記録する装置。一般的には、骨格筋の活動電位の描写を目的とする装置を意味するが、平滑筋の筋電図を観測、記録する装置をさす場合もあり、その場合は、測定する臓器の名を初めに付して、胃電図計、尿管電図計、膀胱電図計(ぼうこうでんずけい)などとよぶ。心電計は、心筋の活動電位を測定する装置であるが、筋電計とは区別されている。
筋電計の構成は、電極、増幅回路、解析装置、記録装置からなり、このほかに、時々刻々の筋電波形を観察するためのブラウン管モニター、時刻信号を発生する計時回路が加わっている。また、誘発筋電図(後述)を記録する場合には、電気刺激装置が付属する。電極は表面電極と針電極とが用いられる。表面電極は直径8~10ミリメートルの銀製の円板、または皿電極で、皮膚を傷つけないので、痛みが検査の妨害になるような場合、および筋の広範囲の放電を観測する場合に用いる。針電極は注射針の中に絶縁した芯(しん)線を1本または数本封入し、これを目的の筋に刺して、ごく限られた範囲の筋の活動電位を観察するのに用いる。骨格筋の活動電位は、電圧が数十マイクロボルトから10ミリボルト程度、周波数が数ヘルツから数キロヘルツであるので、入力抵抗の高い電界効果トランジスタを用い、交流障害の対策として差動増幅回路が採用されている。記録には、インク書きレコーダーでは高い周波成分に追随できないので、写真撮影方式か、データレコーダー、デジタルの記憶装置が使われる。
[古川俊之]
筋電計によって得られた記録波形を筋電図というが、厳密には、神経・筋単位(NMU=neuromuscular unit)の活動電位(スパイク電位)の記録波形ということができる。神経・筋単位とは、脊髄(せきずい)にある前角細胞1個と、それから出る運動神経線維、およびその神経が支配する筋線維群の組合せのことで、その活動電位は、反復するパルス状のスパイク電位(瞬時におこる急激な活動電位)で、軽い随意収縮時には周期性のあるNMU電位が発現するが、筋収縮を強くしていくとスパイク電位の数(頻度)が増し、最大随意収縮時には干渉波が出現するようになる。
誘発筋電図とは、骨格筋の支配神経に100ボルト以上の電気刺激を加えて、筋収縮をおこさせて筋電図を観測するもので、運動神経の2点間の刺激伝導速度や、脊髄を経由する反射性の筋電図(H波という)を調べるものも含まれる。筋電図は筋肉の疾患のほか、脊髄前角細胞、運動神経、神経・筋接合部などの障害の診断に役だつ。最近、動力義手を筋電図で電子制御する実用化実験が注目されている。
[古川俊之]
『石山陽事編集『ME早わかりQ&A 7――脳波計・筋電計・超音波診断装置』(1993・南江堂)』
…骨格筋が生体内にある状態でその活動電位を記録したもの。記録する装置を筋電計という。筋電図の記録法には,皮膚の表面に電極をはりつけて活動電位を記録する表面誘導法と,針状の電極を筋肉に刺入して筋肉局部の活動電位を記録する針電極法とがある。…
※「筋電計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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