算法統宗(読み)さんぽうとうそう(英語表記)Suàn fǎ tǒng zōng

改訂新版 世界大百科事典 「算法統宗」の意味・わかりやすい解説

算法統宗 (さんぽうとうそう)
Suàn fǎ tǒng zōng

中国,明の万暦年間に活躍した民間数学者程大位(字は汝思)の著述で,1592年(万暦20)のころに刊行された。詳しくは《新編直指算法統宗》といい,17巻より成る。巻三~六および巻八~十二の9巻は古算書《九章算術》の篇目に従って問題を配列し,巻十三~十六の〈難題〉は詩歌の形式で問題を書いている。明代に流行した庶民数学の代表作であるが,とくに巻二は〈そろばん〉による計算法を詳説している。数学に関心を持つ人々はこれを虎の巻として大切にしたといわれ,明・清時代にかけベストセラーとして流行し,たびたび版を重ねるとともに,多くの異版が出版された。日本にも江戸時代のはじめに伝わり,1675年(延宝3)に湯浅得之が復刻本を刊行した。これより以前,吉田光由は《算法統宗》を学び,これを範として〈そろばん〉の計算を中心とした《塵劫記(じんごうき)》(初版,1627)を刊行した。この書もまた庶民の間に流行し,多くの異版が出版された。
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百科事典マイペディア 「算法統宗」の意味・わかりやすい解説

算法統宗【さんぽうとうそう】

中国,明末の数学書。正しくは《新編直指算法統宗》。程大位著,1592年刊,17巻。当時普及したそろばんの使用法と日常必要な諸算法を説き,多くの版を重ねた。日本に伝えられて初期和算家に学ばれ,特に本書底本とした吉田光由の《塵劫(じんこう)記》(1627年)を通じて和算発展に大きな影響を与えた。
→関連項目吉田光由

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「算法統宗」の意味・わかりやすい解説

算法統宗
さんぽうとうそう
Suan-fa tong-zong

中国,明代の数学書。万暦 20 (1592) 年,数学者程大位著。 17巻。中国の珠算のやり方を説いた書として特色があり,そのほかイスラム数学による計算法も紹介されている。後代に与えた影響も大きい。日本にも伝えられ,延宝3 (1675) 年に湯浅得之がこの書の訓点本を刊行,和算の進展に大きな貢献をなした。

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世界大百科事典(旧版)内の算法統宗の言及

【中国数学】より

…しかし元の時代から明代を通じて,南宋に始まった庶民数学は一段と隆盛となった。ことに明代には栄敬の《九章算法比数大全》(1450)や程大位の《算法統宗》(1592)などが著された。いずれも《九章算術》に範をとって,伝統数学の範囲でかなり広く諸問題をとりあげている。…

※「算法統宗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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