糸竹大全(読み)しちくだいぜん

精選版 日本国語大辞典 「糸竹大全」の意味・読み・例文・類語

しちくだいぜん【糸竹大全】

  1. 近世邦楽の入門書。貞享四年(一六八七)刊。紙鳶(いかのぼり)(=一節切(ひとよぎり)の本)、大怒佐(おおぬさ)(=三味線の本)、智音之媒(ちいんのなかだち)(=箏の本)の三部を合集したもの。貞享版は伝わっていない。

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改訂新版 世界大百科事典 「糸竹大全」の意味・わかりやすい解説

糸竹大全 (しちくたいぜん)

音楽・歌謡書。上中下3巻。編者不明。1687年(貞享4)京都山本五兵衛初刊か。1699年(元禄12)京都永田調兵衛版が流布。《糸竹初心集》の類書一節切(ひとよぎり)の尺八の書《紙鳶(いかのぼり)》,三味線の書《大ぬさ》,箏の書《知音(ちいん)の媒(なかだち)》の3書の合収。ただし,《知音の媒》は組歌の注釈書で,これを欠く版が多い。《糸竹初心集》と共通または補い合う曲目も多く,その記譜の訳譜・復元作業によって,元禄(1688-1704)以前の民間音楽の実態を類推するための貴重な資料となり,また収載詞章は,近世初期歌謡中,とくに伝承芸術の歌謡の普及と変遷を示すものでもあり,《糸竹初心集》とともに,近世邦楽の音楽文献史上重要な位置にある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「糸竹大全」の意味・わかりやすい解説

糸竹大全
しちくたいぜん

日本音楽の文献の一つ。本来はそれぞれ独立した3種の書『大ぬさ』(三味線の楽譜集)、『紙鳶(いかのぼり)』(一節切(ひとよぎり)尺八の楽譜集)、『知音之媒(ちいんのなかだち)』(箏(こと)組歌の歌詞集)をあわせて刊行したもの。本書は3種の楽器についての記述がひとまとめにされていることから、先行書である『糸竹初心集(しちくしょしんしゅう)』(1664)を模したものと考えられる。前記3書とも貞享(じょうきょう)年間(1684~88)には初版が刊行されていたものであるが、これらを『糸竹大全』として合収した年代については不明な点が多い。現在多く流布するのは1699年(元禄12)に京都の永田調兵衛が刊行したものであるが、3書のうち『知音之媒』を欠くものも少なくない。『大ぬさ』および『紙鳶』の著者は不明。『知音之媒』は松風軒の編と思われる。『大ぬさ』(全4巻)と『紙鳶』(全3巻)には、それぞれの楽器の歴史や奏法の解説と楽譜が記載されており、『糸竹初心集』の類書といえるが、『知音之媒』は箏組歌の歌詞および注釈集で楽譜はなく、他の2書とは性格が異なる。

[千葉潤之介]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「糸竹大全」の意味・わかりやすい解説

糸竹大全
しちくたいぜん

日本音楽の文献。貞享4 (1687) 年初版,元禄5 (92) 年再版か。伝存するのは,同 12 (99) 年刊の京都永田調兵衛版。貞享3 (86) 年初版と思われる『知音 (ちいん) の媒 (なかだち) 』2巻,同2 (85) 年初版と思われる『大幣 (大怒佐〈おおぬさ〉) 』4巻,同4年刊の『紙鳶 (いかのぼり) 』3巻を合収したもの。『知音の媒』は松風軒編の箏組歌の注釈書。『大幣』は三味線初心書で,口三味線と勘所の説明と演奏法および三味線本手や新曲の歌詞を収録。『紙鳶』は一節切 (ひとよぎり) の歌譜と演奏法が記される。

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世界大百科事典(旧版)内の糸竹大全の言及

【柴垣踊】より

野郎歌舞伎の狂言尽しにもとり入れられた。歌は《糸竹初心集》(1664)に,〈柴垣柴垣 柴垣ごしで 雪の振袖 ちらと見た 振袖 雪の振袖 ちらと見た〉とある。【山路 興造】。…

【日本音楽】より


[近世]
 現在民謡と呼ばれる歌の99%は,近世つまり江戸時代の所産である。この期の民謡の歌詞は,都会地流行の歌謡とともに,《糸竹初心集》《淋敷座之慰(さびしきざのなぐさみ)》《大ぬさ》《松の葉》などに収められ,《大ぬさ》《糸竹初心集》には楽譜も記されている。しかし,純粋な民謡を集めたものとしては,《山家鳥虫歌》《鄙迺一曲(ひなのひとふし)》,鹿持雅澄(かもちまさずみ)編の《巷謡編》(1835)などが有名である。…

※「糸竹大全」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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