一節切(読み)ヒトヨギリ

デジタル大辞泉 「一節切」の意味・読み・例文・類語

ひとよ‐ぎり【一節切】

尺八の一種。長さ約34センチ、太さ直径約3センチの竹製の縦笛で、節が一つある。室町中期に中国から伝来桃山時代から江戸初期にかけて流行したが、幕末に衰滅一節切尺八

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精選版 日本国語大辞典 「一節切」の意味・読み・例文・類語

ひとよ‐ぎり【一節切】

  1. 〘 名詞 〙 尺八の一種。長さ一尺一寸一分(約三四センチメートル)ほどの短い竹製の縦笛。普通の尺八と違って節は一つだけある。室町中期に中国から伝えられたといわれ、江戸時代にかけて用いられた。一節切尺八。ひとえぎり。
    1. 一節切〈人倫訓蒙図彙〉
      一節切〈人倫訓蒙図彙〉
    2. [初出の実例]「尺八の一節切こそ音もよけれ、君と一夜は寝も足らぬ」(出典:歌謡・隆達節歌謡(1593‐1611))

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改訂新版 世界大百科事典 「一節切」の意味・わかりやすい解説

一節切 (ひとよぎり)

中世末期から近世にかけての日本で行われた尺八の一種。正しくは一節切尺八といい,一簡切,一節截などとも書く。竹の幹の中ほどで作り,現行の普化尺八より細くて短い。管の上方約3分の1の所に一つだけ節があるので,その名がある。指孔は前面4・背面1で,数と配置は普化尺八と同様だが,孔間比は微妙に異なる。音量は普化尺八より小さく,音域も狭い。起源については,15世紀ころにロアン(朗庵などと書かれる)なる外国人僧侶が伝来したという伝説があるのみで,よくわからないが,遅くとも14世紀ないし15世紀には行われはじめたものらしい。16世紀ころに一般化していたことは,〈尺八のひとよきりこそね(音)もよけれ,君とひとよ(一夜)はね(寝)も足らぬ〉などという小歌によっても知られる。

 古くは十二律に合わせた長短各種があり,筒音により壱越切(いちこつぎり),平調切(ひようぢようぎり)などと呼び分けられたが,宗左流という芸系が興った16世紀後半以後は黄鐘切(おうしきぎり)(筒音は黄鐘≒1点イ音。管長約34cm)が標準となった。その管長が当時多用された壱越調の律音階に適したためであろう。17世紀初葉には宗左流から出た大森宗勲(1570-1625)が多くの譜書を著して宗勲流として普及し,17世紀後半にはその門流の指田一音の指田流が栄えた。また中村宗三著《糸竹初心集》(1664),村田宗清著《洞簫曲(どうしようのきよく)》(1669),著者不明《紙鳶(いかのぼり)》(1687,《糸竹大全》に収められている)の3種の入門独習書の出版が見られ,当時の一節切の流行を物語っている。それらを見ると,17世紀前半までの一節切の音楽は独奏曲(これを〈手〉という)が主体であったが,17世紀後半には流行歌(はやりうた)・踊り歌の伴奏や箏・三味線との合奏(これらを〈乱曲〉という)が盛んになったことがわかる。

 しかし,流行は長くは続かず,18世紀に入るとほとんど吹かれなくなる。急速な衰微の原因は,音量,音域など性能の点で普化尺八に劣ったこと,なかんずく17世紀以後の日本音楽で支配的になった都節音階半音を含む5音音階)の吹奏に適さなかったことに求められる。19世紀初葉にいたり,江戸の町医者神谷潤亭(1783?-?)が細々と伝承されていたこの楽器に着目し,一節切を〈小竹(こたけ)〉と改称し,古伝の曲に自作新曲を加えて《糸竹古今集》(1818)その他多数の譜書を著してその復興に努めたが,一部の好事家の関心を集めただけで,19世紀後半以後,一節切はまったく絶えてしまった。
尺八
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一節切」の意味・わかりやすい解説

一節切
ひとよぎり

5孔1節の尺八の一種。節を一つだけ含む竹管の意からこの名がある。標準管長は1尺1寸1分(約33.6センチメートル)で、普化(ふけ)尺八よりかなり短く細い。マダケの幹の中ほどを用い、節を第5孔(裏孔)と第4孔の間に置く。外面を斜めに切り落とした尺八と同じ歌口をもつが、そこに牛角を埋め込んだものは少なく、また根に近いほうを上にするところなど、普化尺八と異なる。伝来は室町時代中期と伝えられ、16~17世紀に盛行をみた。普化尺八と比べると、基本的奏法はほぼ同じだが、音量・音域が劣り、歌口・指孔が小さいため、技法がやや困難である。そのためしだいに衰微し、19世紀初期に小竹(こたけ)と改名して一時再興されたものの、同中期以後は伝承者を失った。

[月溪恒子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一節切」の意味・わかりやすい解説

一節切
ひとよぎり

尺八の一種。 15世紀中頃から 18世紀初頭までに行われた日本の竹製縦笛。正しくは一節切尺八。管のなかほどに竹の節が1つだけあるのでこの名がある。当初は単に尺八と称した例も多い。管長約 33.6cm。普化 (ふけ) 尺八を小型にしたような形状で,指孔は前面4孔,背面1孔。筒音は黄鐘 (おうしき。イ音) を標準とし,黄鐘切と称するが,当初はさまざまな管長,筒音のものがあった。音量,音質などの性能の点では普化尺八に劣る。江戸時代以前には独奏曲を主とし,隠者的な人々の間で愛好され,江戸時代に入り,流行唄の伴奏にも用いられ流行したが,のち急速に衰え,19世紀中頃以後は絶滅した。

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百科事典マイペディア 「一節切」の意味・わかりやすい解説

一節切【ひとよぎり】

室町から江戸初期にかけて流行した管楽器。縦型フルートで,吹口の形は尺八と同じ。一節切は後世つけられた名称。指孔も尺八と同じ5孔(表4,裏1)あるが,管長が約34cmと短い。

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世界大百科事典(旧版)内の一節切の言及

【尺八】より

…名称は標準管長(1尺8寸)に由来する。日本の音楽史上に現れた広義の尺八には,古代尺八,天吹(てんぷく),一節切(ひとよぎり)尺八などもあるが,現行するのは普化(ふけ)尺八のみであるから,以下,それを主として解説する。〈普化尺八〉は〈虚無僧尺八〉とも呼ばれるが,江戸時代にこの楽器が普化宗(禅宗の一種。…

【日本音楽】より

…また尺八も輸入され普化宗(ふけしゆう)の仏徒(虚無僧)によって行われた。尺八の同類である一節切(ひとよぎり)も輸入され,このほうは一般庶民の楽器として,箏や三味線と合奏されたり,流行歌や民謡を吹くことにも用いられた。また,僧徒の遊宴で行われていた延年と称する総合芸能の中に〈越天楽歌物〉も含まれていたが,それらに基づいて北九州に筑紫流(つくしりゆう)箏曲(筑紫箏)が興った。…

※「一節切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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