紙漉重宝記(読み)かみすきちようほうき

日本歴史地名大系 「紙漉重宝記」の解説

紙漉重宝記
かみすきちようほうき

一巻 国東治兵衛著

成立 寛政一〇年

原本 紙の博物館

解説 世界的に知られた紙漉技術書。著者は、紙漉技術は古来一家相伝の技術として書物などに記されることはなかったが、本書を技術者の枝折とし、また紙を商う人が知らぬのも嘆かわしいとして、紙漉の始終を画に表したと序文に記している。本文方言を交えた対話形式からなる解説と、各ページごとに図が描かれている。楮の植付けから切取りを始めとし、紙漉の順序、出来上った紙を運び出すまでの工程が解説され、当時の人々の日常生活や方言を知るうえでも貴重。著者は美濃郡遠田村に生れ、紙漉の技術を開発し、石見半紙の基礎を築いた人物である。本書は大正一四年に王子製紙の堀越寿助によって複刻され、以後英語・仏語・独語・スペイン語などに翻訳されている。

活字本 「日本庶民生活史料集成」第一〇巻など。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「紙漉重宝記」の意味・わかりやすい解説

紙漉重宝記
かみすきちょうほうき

1798年(寛政10)に、石見(いわみ)国遠田村(島根県益田市)の篤農家国東治兵衛(くにさきじへい)が著した製紙の解説書。大坂で出版された。農家に副業として紙漉きを勧めるため、原料の刈取りから製品の出荷に至るまでを詳細に図解した啓蒙(けいもう)書で、当時の画家靖中庵丹羽桃渓(せいちゅうあんにわとうけい)の漫画風挿絵が多数入っている。現代までに復刻版も多く、海外でも翻訳されている。

[町田誠之]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例