化学パルプで紙を作るときに欠かせない製紙工程の一つ。水で膨潤させたパルプを機械的に処理して製紙に適した性質をパルプ繊維に与える工程をいう。昔は文字どおり臼で繊維を叩(たた)き解きほぐしていたが,17世紀後半にオランダで叩解機(ビーター,ホランダー型)が発明され,これが近年まで使用された。このビーターbeaterは,鋼製の刃を埋め込んだ大きなローラーを回転させ,下に設置した固定刃との間で繊維に強い圧縮力と剪断(せんだん)力を与えて叩解する装置であるが,能率が低いため,現在日本では特殊な紙を作る場合を除いて,パルプの離解,叩解,精整などの処理を連続的におこなう高能率のリファイナーrefinerが用いられている。リファイナーにはディスクリファイナーとコニカルリファイナーがある。前者は幅数mmの刃のついたディスク(円盤)が狭い間隔で向き合っていて,1枚は高速回転する。パルプ懸濁液はディスクの中心から送られ,その圧力と回転ディスクの遠心力によって外側へ移動し,その間に叩解される。後者は回転刃がディスクでなく,先の切れた円錐(コーン)形をしている。叩解しないパルプで作った紙は,吸取紙のようにかさ高で,しまりがなく,強度も小さい。また,表面は粗く印刷しにくい。これは,パルプ繊維が固く,繊維どうしの接触面積が小さいからである。叩解は次のような諸作用から成る。6~10%の濃度のパルプ水懸濁液を強い力で圧縮すると,水で膨潤した繊維どうしがこすれ合ったり刃で押されて,(1)繊維外層がはがれたり,(2)微小な毛羽が立ったり,(3)縦方向にさける。(4)さらに,もまれることにより繊維壁が厚さ数十Åの同心円のような多層構造化したり,(5)切断がおこり短くなる。(1)~(3)を外部フィブリル化,(4)を内部フィブリル化という。叩解の結果,繊維の柔軟性が増加し,それから作った紙は,繊維が密着し微細な繊維が空隙を埋めるので,密度が高く,緻密(ちみつ)で平滑な面をもつ。また強度も増加するが,紙のだいじな特性である不透明度が低下するので,叩解の程度は紙の使用目的に応じてきめられる。
執筆者:臼田 誠人
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…日本ではコウゾ,ミツマタなど靱皮繊維を使ったが,ヨーロッパでは麻くずが主体で,のちに綿ぼろ,わら,エスパルトなども使われた。これらの原料を粥(かゆ)状にときほぐす叩解(こうかい)beatingの操作は,製紙上たいせつな工程であるが,17世紀半ばにオランダでホランダーhollanderが発明され(発明者は不明で,国名にちなんで名付けられた),以後200年ばかり形式は変わっても同じ原理の叩解機(ビーターbeater)が使われた。現在ではパルプの離解,叩解,精製などを行うリファイナーrefinerが一般紙の製造に使われている。…
…日本ではコウゾ,ミツマタなど靱皮繊維を使ったが,ヨーロッパでは麻くずが主体で,のちに綿ぼろ,わら,エスパルトなども使われた。これらの原料を粥(かゆ)状にときほぐす叩解(こうかい)beatingの操作は,製紙上たいせつな工程であるが,17世紀半ばにオランダでホランダーhollanderが発明され(発明者は不明で,国名にちなんで名付けられた),以後200年ばかり形式は変わっても同じ原理の叩解機(ビーターbeater)が使われた。現在ではパルプの離解,叩解,精製などを行うリファイナーrefinerが一般紙の製造に使われている。…
※「叩解」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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