素袍落(読み)すおうおとし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

素袍落
すおうおとし

狂言の曲名。太郎冠者狂言。急に伊勢参宮を思い立った主人は,伯父を誘おうと,太郎冠者 (シテ) を使いに出す。伯父は断るが,太郎冠者に門出の酒をふるまい,餞別に素袍 (→素襖 ) をくれる。太郎冠者の帰りが遅いので出迎えにきた主人は,酔った太郎冠者に腹を立てるが,太郎冠者の落した素袍を拾って,太郎冠者をからかう。のちに福地桜痴作,9世市川団十郎初演で歌舞伎舞踊化された。

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百科事典マイペディアの解説

素袍落【すおうおとし】

狂言の曲目。古くは素襖落とも書いた。シテは太郎冠者。伊勢参宮に立つ主人のいいつけでその伯父のところに報告に行った太郎冠者は,酒をふるまわれ,餞別(せんべつ)に素袍をもらって上機嫌で帰る。途中で使いの遅さに苦りきった主人に会い,隠していた素袍を落として主人に拾われる。酒好きが酔いつぶれてゆくさまをみせる狂言の代表的なもの。歌舞伎舞踊(長唄・義太夫節掛合)の題材として取り入れられ,新歌舞伎十八番の一つになっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

素袍落
すおうおとし

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。ふと伊勢(いせ)参宮を思い立った主人は、太郎冠者(シテ)に、かねて同行を約束していた伯父へこのことを伝えにやる。伯父は、急のことで行けないと返事し、冠者も供をするであろうと門出を祝って酒をふるまう。酔いの回った冠者は、慈悲深い伯父を褒め、けちな主人をけなして気炎をあげる。そのうえ祝儀に素袍までもらっていっそう機嫌よく、小歌交じりに帰途に着く。あまり帰りが遅いので途中まで迎えにきた主人はこのようすを見て苦りきっているが、冠者がつい取り落とした素袍を拾うと、2人の機嫌は逆になる。大蔵流では冠者が素袍を取り返して逃げ、和泉(いずみ)流では素袍を持って入る主人を冠者が追い込む。冠者の酔態が見どころ。明るくにぎやかな曲なので、よく上演される。
 これを歌舞伎(かぶき)舞踊化したものに新歌舞伎十八番の『素襖落(すおうおとし)』がある。本名題(ほんなだい)『素襖落那須語(なすのかたり)』。義太夫(ぎだゆう)・長唄(ながうた)掛け合い。福地桜痴(ふくちおうち)作詞、鶴沢安太郎・杵屋(きねや)正次郎作曲。1892年(明治25)東京・歌舞伎座で9世市川団十郎が初演。太郎冠者が酒宴の芸に能『八島(やしま)』の替間(かえあい)(特殊演出)「那須」(那須与市扇の的の語り)を演ずるのが独特の趣向である。[小林 責]

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