知恵蔵 「細田守」の解説
細田守
小学校時代、言語障害があり、なかなかクラスになじめない中、日本の有名アニメ監督、宮崎駿が手掛けた映画「ルパン三世 カリオストロの城」を見てその作品世界に引き込まれ、アニメのディレクターを志すようになる。
金沢美術工芸大を卒業後、宮崎駿のアニメ制作会社、スタジオジブリの就職試験を受けるも不採用となる。その際に宮崎から細田の才能を評価する内容の手紙を受け取っている。
91年、東映動画(のちの東映アニメーション)に入社、アニメーターとしてアニメーション制作に関わりながら、演出も手掛けるようになる。97年、テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第4シリーズ)で演出家デビュー。2000年、「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」を監督し、注目を集めた。
また00年、東映アニメーションからスタジオジブリに出向し、「ハウルの動く城」の制作に取り組むが難航し、制作は中止となった。「ハウル」は後に宮崎駿が完成させた。
その後はテレビアニメの制作に関わり、05年に公開された劇場アニメ「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」の監督も務めるが、同年、東映アニメーションを退社しフリーとして活動を始める。
06年、劇場アニメ「時をかける少女」を制作。筒井康隆の同名のSF小説を原作とした大林宣彦監督の実写版映画「時をかける少女」(83年)の約20年後の世界を描いた作品は、じわじわと人気を集め、国内外から注目された。09年には、妻の実家がある長野を舞台に、田舎の親せきたちが力を合わせて困難に立ち向かう劇場アニメ「サマーウォーズ」を公開。興行収入16．5億円という大ヒットを記録した。
11年、プロデューサーの齋藤優一郎と共にアニメ制作会社「スタジオ地図」を設立し、母親が特殊な能力を持った2人の子どもを育てる13年を描いた劇場アニメ「おおかみこどもの雨と雪」の制作に乗り出す。12年7月に公開された同作は、興行収入42．2億円と完全オリジナル作品としては異例の大ヒットとなり、フランスなど約45カ国で公開。第45回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門最優秀長編作品賞、第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞など、国内外で多くの賞を受けている。
そして15年7月11日、孤独な少年と化け物剣士とが修業を通して成長し、親子のような絆で結ばれていく劇場アニメ「バケモノの子」を公開。公開30日で興行収入38億円を突破し、フランスなど世界37カ国・地域で配給されることが決まっている。
映画を制作、鑑賞することは「希望を表明する行為」と話し、人間や人生を肯定的に捉えられる作品づくりを目指している。
(南 文枝 ライター／2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報