改訂新版 世界大百科事典 「カリオストロ」の意味・わかりやすい解説
カリオストロ
Cagliostro
生没年:1743-95
カサノーバやサン・ジェルマン伯と並んで,フランス革命直前に暗躍した冒険児の一人。幼名ジュゼッペ・バルサモGiuseppe Balsamoとしてシチリア島パレルモのリボン商人の家に生まれ,数々の非行を重ねてから,東方生れの伝説的な王子アシャラという高貴な血筋を詐称する山師として世に登場した。やがてローマで生涯の伴侶となるロレンツァ・フェリチアーニと邂逅し,以来ヨーロッパ諸国を放浪,各地の宮廷にフリーメーソン大首長のふれ込みで登場しては,錬金術,予言の奇跡を演じて人々をたぶらかした。ミタウのクアラント公国,エカチェリナ2世のロシア宮廷,ポーランドのポニンスキ大公,シュトラスブルク(ストラスブール)のロアン枢機卿のサロンなどに出入りしては同じ手口の〈奇跡〉を演じ,1785年パリのベルサイユ宮ではマリー・アントアネット相手の〈王妃の首飾事件〉に巻き込まれてバスティーユに投獄される。その間情婦フェリチアーニを女首長に頂く女性フリーメーソン結社結成や,あやしげな若返り美顔水販売などで悪名をあげた。89年の革命前夜にローマに帰ると(一説には妻の密告により)サンタンジェロ城に監禁されて獄死した。彼が真にフリーメーソン直属の国際連絡員であったのか,その身分を詐称した山師にすぎなかったのかは,いまだに見定めがたい。この謎めいた人物は同時代の作家の興味をひき,ゲーテはイタリア旅行中彼の生家を訪ねて後年《大コフタ》(1791)に,またJ.C.F.シラーは《見霊者》(1789)にカリオストロをモデルとした人物を登場させている。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報