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細胞壁合成阻害剤 さいぼうへきごうせいそがいざい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

細胞壁合成阻害剤
さいぼうへきごうせいそがいざい

細菌の細胞壁の合成を阻害し殺菌作用を示す薬物。ヒトの細胞と細菌細胞の大きな違いは,細菌が細胞膜の外側にさらに細胞壁をもっているということである。病原微生物細胞の細胞壁合成の段階に対して特異的に作用する薬物を開発すれば,ヒトに対する毒性の少ないものとなりうる。抗生物質のなかでもb-ラクタム剤は,細胞壁の合成にかかわるペニシリン結合蛋白と細菌の細胞内で競合的に働き,細胞壁の合成を阻害する。ペニシリン系,セフェム系,モノバクタム系のb-ラクタム剤,またフォスフォマイシンなどがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

細胞壁合成阻害剤
さいぼうへきごうせいそがいざい

殺菌剤を病原菌の標的との相互作用で分けたときの分類の一つ。菌類の細胞壁の主要な構成成分は、キチンである。キチンは、N-アセチルグルコサミンが重合した多糖(ポリN-アセチルグルコサミン)であり、UDP(ウリジン二リン酸)-N-アセチルグルコサミンからキチン合成酵素により生合成される。細胞壁合成阻害剤は、このキチン生合成を阻害することにより殺菌作用を発現する。
 細胞壁合成阻害剤には、ジカルボキシイミド系(プロシミドン、イプロジオンおよびビンクロゾリン)と抗生物質のポリオキシン系(ポリオキシン)がある。
(1)ジカルボキシイミド系殺菌剤 ジカルボキシイミド系殺菌剤は、カーバメート系除草剤クロルプロファムが起源とされ、日本では、1981年(昭和56)にプロシミドンが登録されている。ジカルボキシイミド系殺菌剤は、菌糸の伸長を阻害し異常に膨潤化させ、菌糸細胞を破裂させることにより殺菌効果を発現する。また、菌核や胞子の形成も抑制するとされているが、阻害作用の詳細は未解明である。果樹、蔬菜(そさい)および花卉(かき)の灰色かび病や菌核病等に対し優れた効果を示すが、哺乳(ほにゅう)動物の内分泌攪乱(かくらん)活性を示すことが報告されている。
(2)ポリオキシン系殺菌剤 ポリオキシン系殺菌剤(ポリオキシン)には、放線菌(Streptomyces cacaoi var. asoensis)が産生するAからMまでの類縁体があり、その化学構造は、キチン合成酵素の基質であるUDP-N-アセチルグルコサミンと類似した骨格である。そのため、ポリオキシンは、キチン合成酵素の活性部位に結合し、キチン合成を競合的に阻害する。このことにより、菌糸や発芽管の先端が球状に膨潤し、殺菌効果として発現する。ポリオキシンB、DおよびLがイネ紋枯病(もんがれびょう)菌やリンゴ斑点(はんてん)落葉病に卓効を示し、日本では、1967年(昭和42)にポリオキシンB、1970年にポリオキシンDが登録された。[田村廣人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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