経済議会(読み)けいざいぎかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「経済議会」の意味・わかりやすい解説

経済議会
けいざいぎかい

職能別団体を選出母体とする議員によって構成される議会。労働者と企業者および各職能団体利益代表者によっておのおの対立する利害の調整を図ろうとするもので、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスイタリアなどに勢力のあったサンジカリズムや、第一次世界大戦中イギリスにおこったギルド社会主義によって唱えられた。このような会議体は、実定制度のうえでは、ドイツ、フランスのほか、イタリア、ポーランドオーストリア諸国で、国民議会とは別に、社会政策、経済政策あるいは経済計画に関する政府あるいは議会の補助的、諮問的機能をもつ会議体として設置された。

 ドイツにおいては、ワイマール共和制下で憲法(第165条)の規定に基づいて中央および地方に経済会議が設置された。中央の国家経済会議は、全国の職能団体を、農業、工業、商業・金融、運輸・公共事業、手工業、消費者、公務員、自由業に区分し、それぞれ一定数の代議員を選出し、さらに政府および議会指名議員を加えて総数326名の議員によって構成された。22の常任委員会を設け、その権能は、政府が社会政策および経済政策に関する基本的立法を議会に提出する以前に、意見を聴取しなければならず、また政府に建議することができるほか、立法発案権を有した。1933年ヒトラー政権によって廃止され、現在のボン基本法(ドイツ憲法)下では存在しない。

 フランスでは、アンシャン・レジーム下の商業審議会Conseil du Commerceや、第二共和政下の労働諮問委員会Commission Consultative du Travailなどを前身として、1925年、国家経済審議会Conseil National Economiqueが設置された。重要な経済問題に関する政府の諮問機関で、構成員は、労働代表、消費者代表、資本家代表計47人からなり、1936年の人民戦線内閣の成立によって増員され、産業間の利害調整の役割を果たした。第四共和政では、憲法(第25条)上の機関として経済会議Conseil Economiqueが設置され、さらに現行第五共和国憲法(第69条~第71条)では経済社会評議会Conseil Economique et Socialに改組されて、その機能は強化された。経済社会評議会の構成員は、従来の伝統により、政府、雇用者、労働者、商・工・農の職能代表および低所得者層、海外帰国者を含め、議会および政府に対して、経済政策、国防支出、社会保障などに関して広範な勧告権を有し、ことに経済計画については、草案作成から完成までの過程に重要な役割を果たすこととなった。

[山野一美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経済議会」の意味・わかりやすい解説

経済議会
けいざいぎかい
economic council

個人に基礎をおき,人口数に比例した代表制による立法議会に対して,各種の職能団体から選出された利益代表による職能議会をいう。 20世紀に入ると各国で階級闘争が激化し,それは必然的に政治機構に反映して,国民の同質性という観念のもとに成立していた代表制が批判されることとなった。そこで,国政をより円滑に,民主的に運営するため,職能的利益を代表する政治方式が,第1次世界大戦後,各国で成立した。イタリアのファシスト国家のように国家主義を基調としたもの,ワイマール共和国のように修正資本主義を基調としたものなどがあったが,成果をあげたものは少く,第2次世界大戦後のフランスにおける経済議会が,比較的成功した例といわれている。

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