労働者と資本家の階級対立や、恐慌・失業・戦争といった資本主義体制の諸矛盾を、国家の経済活動への介入や経済制度の修正などによって改良ないしは緩和して、社会主義革命などによる資本主義体制の崩壊を回避し、体制の永続化を図ろうとする考え方、またそうした諸政策を行っている資本主義経済の体制。歴史的には、第一次世界大戦後のドイツで試みられた労資協調的経営管理方式や、1930年代にアメリカでとられたニューディール政策、第二次大戦後のイギリスにおける「揺り籠(かご)から墓場まで」の社会保障制度による福祉国家政策などが先駆的なものである。しかし、修正資本主義という用語は、わが国の経済同友会が1947年(昭和22)にその構想を提唱するに際して初めて用いたものであり、それは、終戦直後のわが国における労働運動の高揚、民主化闘争の激化などに直面して、日本資本主義を擁護するためのものであった。現在では、すべての先進資本主義国において国家が経済活動を拡大させており、修正資本主義の体制をとっているといえる。
修正資本主義の理論には、資本主義の欠陥はどこにあるのか、また、どのように修正すべきかについてさまざまな考え方があるが、基礎となっているのは次のような考え方である。第一は、J・バーナム以来の経営者革命論に由来する階級対立の緩和・解消論である。大企業では、株式の所有者が広く大衆的に分散(株式の民主化)しており、資本所有に基づく少数者(資本家)の支配は後退し、企業は資本をほとんど所有しない専門経営者によって運営されるようになっている(所有と経営の分離)。専門経営者は、企業をめぐる利害関係に対して中立的な存在として社会的責任を自覚し、株主・経営者・労働者の協調関係を重視した企業経営を行うようになるので、資本の所有と非所有に基づく階級対立はしだいに解消する、というのがこの主張の基礎となっている認識である。最近のものとしては、J・K・ガルブレイスのテクノストラクチュア論、拮抗(きっこう)力の理論がこの考え方に沿うものである。第二は、国家の経済活動や私企業に対する一定の規制を通じて、失業・貧困・恐慌などの諸矛盾を回避すると同時に、社会保障や租税政策によって所得の不平等を緩和しようというケインズ経済学の主張である。これらの議論は、経営者や国家を、階級対立や利害関係に対して中立的で、対立や矛盾を調整しうる第三者的な能力をもつものとみている点で共通している。
なお、マルクス経済学では、国家の経済活動への介入は、階級対立や矛盾を解消するものではなく、階級対立を一定程度緩和しつつ、独占的大企業の資本蓄積を補完・促進しているものと理解し、このような体制を国家独占資本主義とよぶ。
[佐々木秀太]
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…経営者たちが経済・社会問題の勉強をし,その成果を政府や社会に向かって意見発表,提言の形で出す,いわば財界の研究集団であるが,個人参加のため,企業の利益に必ずしもとらわれない自由な発言ができる。とくに当初は,所有と経営の分離を強調し,労使協同で経済再建をはかるなどの〈修正資本主義〉的経営理念を打ち出すなど,進歩性が目立った。48年代表幹事制に移行。…
… また,このころには主要諸国で普通選挙制が一般化して大衆の政治的・経済的要求が強まるとともに,ロシア革命によって社会主義の脅威が現実化したために,政府はこれに対応して失業対策などさまざまの社会改革を実施した。
[国家独占資本主義,修正資本主義]
こうした傾向は大恐慌をへて本格化する。1929年にアメリカでおこった恐慌は,アメリカ国内での過剰な投資の拡大が原因とみなされるが,その深さと広がりは未曾有のものであり,アメリカの失業は一時1300万人,25%にものぼった。…
…これらの政策は,資本主義体制の救済を意図したものであるが,それを達成するために多くのきわめて大胆で斬新な方策が導入され,その過程でアメリカ経済の構造には重要な変化が生じるにいたった。とくに政府の経済的機能が著しく拡大・強化され,国家権力による規制および政府資金の活用が資本主義経済体制の維持にとり不可欠の要素となったが,こうした事態は国家独占資本主義,修正資本主義,混合経済体制といった諸概念で規定されている。ローズベルト自身には当初から明確な体系だった政策論はなく,むしろ必要に応じて施策を行うといった面が強かったが,それだけに世論の動向には機敏に対応し,また急進的といえる改革政策が手がけられたこともあった。…
※「修正資本主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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