絵金(読み)エキン

デジタル大辞泉 「絵金」の意味・読み・例文・類語

えきん〔ヱキン〕【絵金】

[1812~1876]幕末から明治初期の町絵師土佐の生まれ。本姓は弘瀬、通称金蔵。絵金は俗称。江戸狩野派に学び、土佐に帰って芝居絵に怪奇的で特異な画風を展開した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絵金」の意味・わかりやすい解説

絵金
えきん
(1812―1876)

幕末から明治初年に活躍した土佐(高知県)の町絵師。通称を金蔵といい、絵師金蔵という意味の絵金の名で親しまれた。姓は木村、のち弘瀬(ひろせ)、一時林を名のり、名は柳栄または美高、洞意(どうい)、友竹斎、雀翁(じゃくおう)などと号した。土佐の城下新市町の髪結いの子として生まれ、幼少から画業に志し、藩のお抱え絵師池添美雅(いけぞえよしまさ)に師事して画才を認められた。

 17歳のとき、藩主山内容堂の息女徳姫の供に加わり江戸へ出、幕府御用絵師狩野洞白(かのうどうはく)について狩野派の画法を習得、同時に末期浮世絵の退廃的表現にも深く影響された。3年後に帰国して藩のお抱え絵師に取り立てられるが、数年後にスキャンダル(一説狩野探幽(たんゆう)らの偽作を行うという)によりその地位を失い、以後在野の画工としての絵金時代に入る。代表作として、夏の宵宮(よいみや)に神社の境内や参道を飾った台提灯絵(だいちょうちんえ)がある。ほぼ1間(約1.8メートル)四方の二枚折り屏風(びょうぶ)仕立てに泥絵の具で描かれた歌舞伎(かぶき)芝居絵だが、奔放な筆致と原色をばらまいたような鮮烈な彩色によって、激情の表出とおおらかな戯画化をあわせ果たした独得の絵画世界を創出している。

[小林 忠]

『広末保・藤村欣市郎著『絵金』(1968・未来社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「絵金」の意味・わかりやすい解説

絵金 (えきん)
生没年:1812-76(文化9-明治9)

幕末から明治初年に活躍した土佐(高知県)の町絵師。通称金蔵,絵金は絵師金蔵の略称。本名は弘瀬洞意。友竹斎雀翁と号した。高知城下新市町の髪結の家に生まれたが,画道に志し,藩のお抱絵師池添美雅に師事して画才を認められた。1829年(文政12)江戸に出て狩野洞白に学び,狩野派の画法を習得して洞意の画名を拝領,32年(天保3)帰国して藩のお抱絵師に取り立てられる。数年後不始末をおかしてその地位を失い,以後没年までが官を離れた在野の画工としての絵金時代となる。代表作は夏の宵宮に飾るための台提灯絵(だいちようちんえ)で,奔放な筆致と鮮烈な色彩によるその歌舞伎芝居絵は,南国土着の民衆の激情をおおらかに発散させた独特の絵画世界となっている。
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朝日日本歴史人物事典 「絵金」の解説

絵金

没年:明治9.3.8(1876)
生年:文化9.10.11(1812.11.14)
幕末・明治初年の浮世絵師。土佐(高知県)の髪結いの子として生まれる。姓は弘瀬,名は柳栄,美高,通称金蔵。文政10(1827)年ごろ,土佐藩の御用絵師池添美雅に狩野派を学び,同12年江戸に出て駿河台狩野家の狩野洞白に入門する。天保3(1832)年帰郷し,土佐藩の御用絵師となるが,6年偽絵を描いたことから御用絵師の身分を失う。以後,放浪生活ののち,郷里で町絵師として台提灯絵,絵馬などを制作。題材的には歌舞伎を多くテーマとし,表現的には幕末の時代性を色濃く映す血みどろシーンを得意として,絵屋金蔵,略して絵金と呼ばれた。

(佐藤道信)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「絵金」の解説

絵金 えきん

1812-1876 江戸後期-明治時代の絵師。
文化9年10月11日生まれ。文政12年江戸にでて駿河台(するがだい)派の狩野洞益(かのう-どうえき)にまなぶ。帰郷して土佐高知藩の絵師となるが,偽絵をつくり,その地位をうしなう。以後,町絵師として絵馬や,夏祭りの宵宮をかざる台提灯絵をかいた。歌舞伎を主題にした独特な血みどろ絵で知られる。明治9年3月8日死去。65歳。姓は弘瀬。名は柳栄,美高。通称は金蔵。絵金は絵師金蔵の略称。号は洞意。代表作に「双生(ふたご)隅田川」など。

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367日誕生日大事典 「絵金」の解説

絵金 (えきん)

生年月日:1812年10月11日
江戸時代;明治時代の浮世絵師
1876年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の絵金の言及

【芝居絵】より

… そうした中で,西洋画の遠近法を採り入れた〈浮絵〉の手法により劇場の内部を統一的に描いた奥村政信(1686‐1764)や,三都の芝居町の楽屋内の模様をそれぞれ大判三枚続きの大画面に精細に報告した歌川国貞(1786‐1864),あるいは土壁への釘による落書になぞらえて滑稽な役者似顔の戯画を生んだ歌川国芳(1797‐1861)らの,異色の画業が特筆されるであろう。さらには,幕末の土佐に出て,奔放な筆致と原色的な色彩を用い,地方土着の激情を台提灯絵(だいちようちんえ)の芝居絵に発散させた絵金(1812‐76)の活躍も注目に価するものがある。役者絵【小林 忠】。…

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