続本朝往生伝(読み)ぞくほんちょうおうじょうでん

改訂新版 世界大百科事典 「続本朝往生伝」の意味・わかりやすい解説

続本朝往生伝 (ぞくほんちょうおうじょうでん)

日本往生極楽記》の後をついで往生者42人の行業を漢文体で記したもの。大江匡房(まさふさ)撰。1101-11年(康和3-天永2)の成立。天皇公卿僧侶,在俗男子・女子(尼を含む)の順で記すが,この記載順序は他に類例をみない。国史・別伝を素材とする伝もあるが,匡房に近い人々の伝が多いこと,匡房が国司として在任した大宰府,美作(みまさか)の往生者が加えられるなど,自己の見聞によるところが多いと考えられる。また収録者の約95%が天台系,とくに良源門下の著名な浄土教家であることから,当時の貴族社会における天台浄土教の隆盛をうかがうことができる。
往生伝
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「続本朝往生伝」の意味・わかりやすい解説

続本朝往生伝
ぞくほんちょうおうじょうでん

平安後期の往生伝。一巻。大江匡房(おおえのまさふさ)著。1101年(康和3)から11年(天永2)までの間の成立。書名は、慶滋保胤(よししげのやすたね)の『日本往生極楽記』に続く意。一条(いちじょう)天皇以下の往生者(阿弥陀(あみだ)仏の浄土に往生した人)42名の略伝を記す。配列は、高位者からの品位別で、各項内はほぼ年代順となっている。おもな往生者には、源顕基(あきもと)、遍昭(へんじょう)、源信(げんしん)、増賀、慶滋保胤、大江定基、源頼義(よりよし)らがいる。往生者の大半は天台宗系で、とくに横川(よかわ)(比叡(ひえい)山三塔の1)の関係者が多い。『拾遺往生伝』以下の往生伝に影響を与えた。

[多田一臣]

『井上光貞・大曽根章介校注『日本思想大系7 往生伝・法華験記』(1974・岩波書店)』

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世界大百科事典(旧版)内の続本朝往生伝の言及

【大江匡房】より

…神儒仏道にひろく通じ,諸道兼学の啓蒙的百科全書家ともいえよう。わが国の神仙と目される37人の伝を記した《本朝神仙伝》,慶滋保胤(よししげのやすたね)の《日本往生極楽記》のあとを継ぎ,寛和以後の往生人42人の伝を録した《続本朝往生伝》は唱導文学のうえで,また彼の言談を蔵人藤原実兼が筆録したものといわれる《江談(ごうだん)》(《江談抄》)は説話文学のうえで,彼の制作した願文115編を撰録した《江都督納言願文(ごうととくどうげんがんもん)集》とともに院政期文学史の流れの中で注目すべき遺産である。そのほか彼の作品は《朝野群載》《本朝続文粋》などに,自照的な《暮年詩記》,批評文学としての《詩境記》,院政期の庶民生活をつづった《対馬貢銀記》《遊女記》《狐媚記》《傀儡子記(くぐつき)》《筥崎宮記(はこざきぐうき)》《洛陽田楽記》などの特色ある作品が見られる。…

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