歌舞伎狂言。世話物。5幕。通称《小猿七之助》。河竹黙阿弥作。1857年(安政4)7月江戸市村座初演。主なる配役は,小猿七之助を4世市川小団次,奥女中滝川のち御守殿お熊を4世尾上菊五郎,与四郎を5世坂東彦三郎,七五郎・与四郎親西念を坂東亀蔵ほか。吉原中万字屋の名妓玉菊の150回忌にあたり,講釈種の〈小猿七之助〉の話と綯交(ないま)ぜに脚色した作。再演からは〈玉菊〉のくだりは切り離され,後に3世河竹新七が《星舎露(ほしやどるつゆの)玉菊》として独立させた。酒屋の手代与四郎は品川の遊廓からの帰途,主人の金をすりの七五郎に奪われ,主人への申しわけに永代橋から身を投げる。七五郎のせがれで,これもすりの七之助は,永代橋で奥女中滝川の簪(かんざし)を抜き取るが,滝川の美しさに魅せられる。彼はやがて雇中間となって滝川に近づき供回りで外出するが,洲崎堤で大雷雨にあい,気絶した滝川の介抱をして思いをとげる。滝川は心を決めて七之助の女房となり,のちには吉原の切見世で御守殿お熊と名のり女郎となる。七五郎は与四郎の死霊の祟りで病気となる。七之助は親のため,お熊の弟と知らず所化の教真を殺して金を奪う。悪事が重なり逃亡した七之助は越ヶ谷で与四郎の親西念に会い,罪を悔い出家して西念の弟子になる。江戸末期の頽廃的世相をリアルに描くとともに,3幕目の〈洲崎堤〉など特に濃厚な官能的描写で知られる作品である。
執筆者:林 京平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…《処女評判善悪鏡(むすめひようばんぜんあくかがみ)》の2番目序幕で,柳橋の料亭梅川の2階で,女賊素走りお熊(4世市村家橘,後の5世尾上菊五郎)が奥女中竹川になりすまし,真野屋徳兵衛(5世坂東彦三郎)に色じかけで悪事を働くという場面に用いられた。《網模様灯籠菊桐(あみもようとうろのきくきり)》の小猿七之助と滝川の組合せで演じることもある。(2)端唄・うた沢の曲名。…
※「網模様灯籠菊桐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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