はくちょう座にある散光星雲。細い繊維の集合のように見える二つの星雲(NGC6992、NGC6960)で、この二つにさらに近傍の星雲をあわせてみると、視直径約3度と月の見かけ上の大きさの数倍、実直径では数十光年(1光年=約9兆4600億キロメートル)に達する巨大なループを描いていることがわかる。可視光では入り組んだ繊維のように光るので「網状」とよぶが、実体は毎秒100キロメートルの高速で膨張する高温度のガス球殻である。実際、電波望遠鏡で観測すると全体が球形をなすことがわかる。およそ1万年前に爆発して飛散した超新星の名残(なごり)と考えられ、高速で膨張する衝撃波が星間空間の希薄なガスと激しくぶつかって光と電波を発しているのである。これを一般に、超新星残骸(ざんがい)とよぶ。地球からの距離は約1800光年。
[海部宣男 2017年7月19日]
はくちょう座ε星とζ星の間に広がる超新星の残骸。カタログ番号はNGC6960,6992,6995。数万年ほど前に起こった超新星の爆発によって,毎秒数千kmの速度でガスが放出された。膨張するときに,まわりの星間空間にあったガスを掃き集め,膨張速度が落ちてきて,現在では毎秒300kmの速度になっている。網状星雲はフィラメントが何本も重なって一つの大きなリング状の形になっている。このようなフィラメントには,電離したガスが多量に存在している。ガスの電離は爆発した中心星の放射する電離光子で起こっているのではなく,膨張するガスが星間空間にあったガスと衝突するときに,水素原子が電離されて,約1度あまりのところが環状に輝いている。1100光年の距離にあり,実直径は90光年もある大きな星雲である。星雲内部は100万Kもの高温になっており,X線や電波も強く放射している。あと10万年もたつと,膨張速度が小さくなって,ガスが電離されなくなり,星雲として輝けなくなる。
執筆者:磯部 琇三
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…銀河系内に1000個余りが知られていて,いて座の銀河中心方向に数多く密集している。
[超新星の残骸]
おうし座のかに星雲,はくちょう座の網状星雲などの星雲は超新星の残骸である。水素,ヘリウム,窒素,酸素,ネオン,硫黄などの強い輝線がある。…
※「網状星雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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