銀河系内にあるガスとダスト(塵(ちり))からなる星間物質が光って見えるもの。散光星雲という名称は、望遠鏡の性能があまりよくなかった時代に、ぼんやりと見える天体(星雲)を見かけのようすにしたがってつけたものである。のちに分光観測によって星雲の性質が調べられ、散光星雲には、反射星雲と発光星雲があることがわかった。反射星雲は、ガスに混じっているダストが近くの星からの光を反射・散乱して光っているものである。発光星雲はHⅡ領域(あるいは電離水素領域)ともよばれ、水素ガスが高温度星から放たれる紫外線で熱せられて発光しているものである。反射星雲と発光星雲は、星生成領域や若い散開星団に附随して見られることが多い。そのような場所ではしばしば暗黒星雲も見られる。大質量星の進化の最後に起こる超新星爆発で吹き飛ばされたガスが光っている超新星残骸も散光星雲に含める場合がある。
[岡村定矩]
星雲のうちで,不規則な形で明るく輝いているものをいう。その中にはガスが高温度星の紫外光をうけて電離し発光している輝線星雲(発光星雲ともいう)や,星間微粒子が星の光を反射して輝く反射星雲などがある。超新星の爆発で飛び散ったガスの雲をふくめることもある。散光星雲の多くは,暗黒星雲が混在して光と影の織りなす美しい模様を見せる。ある星雲が輝線星雲になるか反射星雲になるかは星雲を光らせる星の表面温度による。温度2万K以上の高温星では紫外光が強く輝線星雲となる。銀河系内で散光星雲は多くの場合,星の形成領域と深く結びついている。高温度星の存在は最近星が形成された証拠であるし,電波あるいは赤外線によって形成過程にある原始星を観測することもできる。遠方の銀河に存在する大型の散光星雲はその直径などからその銀河までの距離を推定するという目的に使われることもある。
執筆者:小暮 智一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…輝線星雲は銀河系内部の天体現象として見直すと,恒星がその生涯の晩年に質量を放出してつくる惑星状星雲,恒星が爆発してとび散ってできる超新星の残骸,若いO型星から放射される紫外線で星間ガスが電離してできるHII領域などに分けられる。実際には惑星状星雲を除く輝線星雲と反射星雲を合わせて〈散光星雲〉と呼ばれてきている。したがって星雲の名称と分類をまとめると次のようになる。…
…光や電波でよく見える領域の一つで,オリオン星雲やオメガ星雲などの物理的呼名である。これらの領域は電離した水素や,酸素,炭素などの再結合線スペクトルによって観測され,美しい雲のように輝くので散光星雲とも呼ばれる。表面の温度が数万Kの大きな明るい星の周囲の水素原子は,星からの強い紫外線のために電離されて,イオンの密度はきわめて小さい(10~100個/cm3)が,直径10~100光年の巨大なプラズマ領域を作る。…
※「散光星雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新