改訂新版 世界大百科事典 「縁辺労働力」の意味・わかりやすい解説
縁辺労働力 (えんぺんろうどうりょく)
そもそも労働力と非労働力との間には,これを一線で画するような明確な境界があるわけではなく,その間には家事と就業を兼ね,就業は従な主婦を中心とした黒とも白ともつかぬ薄墨色の中間層があって,労働力と非労働力の間をたえず流動しているものである。その結果として,労働力はこの中間領域にある浮動層の断続的な労働市場への参加に応じて,たえず上下に揺れ動くことになる。こうした薄墨色の浮動層を縁辺労働力という。図は,この縁辺労働力が労働市場において景気変動に対するクッションの役割を演じている姿をみるために掲げたものである。ここにみるような女子就業者の大幅かつ急速な増減は,あらかた縁辺労働力の参入・退出によってもたらされたものである。そのため女子の失業は,女子雇用の激減する景気後退期にも目だって増加することは少なく,かえって景気回復期に女子の雇用が伸びだしたときに増加する傾向が認められる。縁辺労働力の主力は,昭和30年代には農家の主婦であったが,全国的な都市化と都市におけるパートタイマーの職場の拡大のため,近時では都市勤労者世帯の主婦に移っている。
執筆者:梅村 又次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報