特定の問題に対して、本来その真の意思決定主体であるにもかかわらず、その意思決定過程から疎外されている一般大衆が、彼らの意見を反映する手段として署名を集め、それを当該意思決定主体に提出する運動のこと。運動論的には、これは、運動側の主張を大衆に伝え理解を広めるとともに、大量の署名を集めて当該の問題の意思決定に対して強力なプレッシャーをかけていくものである。ヨーロッパにおいては1830年代のイギリスのチャーティスト運動以来の伝統があり、日本においては1880年(明治13)における国会期成同盟の十数万に及ぶ署名運動がこの運動の実質的始まりであろう。多くの成果をあげてきているが、東京都杉並区の主婦の運動から始まった原水爆禁止の署名運動が、1000万人を超す署名を集めて原水爆禁止世界大会に結実していったのは、その典型である。ただし、運動にコミットしやすいものの、それ以上に展開していかず、形骸(けいがい)化してしまったり、署名の信憑(しんぴょう)性が疑われたりする危険性をもつ。
[矢澤修次郎]
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