廻状(読み)かいじょう

改訂新版 世界大百科事典 「廻状」の意味・わかりやすい解説

廻(回)状 (かいじょう)

一般的には,複数のあて先に対し,順次に回覧させる方法をもって同一の用件伝達する文書のこと。廻文,廻章とも言い,中世には,諸役への参勤や訴訟当事者の出頭を令する際に,この形式の文書が多く用いられた。近世では,領主代官が支配下の村々に命令を伝える場合や,村々の日常的な連絡あるいは一揆への参加を呼びかける文書(一揆廻状)に,廻状が使用されたが,ふつう近世で廻状と言えば,前者を指す。多くの場合,一般的法規制にかかわる文書が触書と呼ばれたのに対し,廻状は年貢,夫役の徴収命令や臨時の通達などを主としたが,触書もふつうは廻状形式をとって伝達されるのであり,古文書学上の区別は難しい。廻状を回す村は,十数ヵ村が一組となっており,各村では廻状を受け取ると,名主がその内容を〈御用留〉〈御廻状写帳〉などに写し取り,廻状に時刻を書き込んで次の村に回した。そして最後の村(留村)から差出者に返す定めであった。
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関連語 正人 安藤

日本大百科全書(ニッポニカ) 「廻状」の意味・わかりやすい解説

廻状
かいじょう

ある用件を複数以上の者に対して順次回覧し、最後に発信者に返送されるように作成された文書。中世では、朝廷寺院幕府などで用いられ、披見者は自分の名に合点(がってん)や奉(うけたまわる)と記した。江戸時代は、領主や代官が支配下の村々への命令や伝達などに用いた。すなわち触書(ふれがき)・夫役(ぶやく)・年貢・代官派遣などの公務を通達するときに、代官所・陣屋から伝達経路に従って村々を順達した。また村々相互の日常的な連絡あるいは一揆への参加を呼びかける一揆廻状(いっきかいじょう)等もある。廻状を回す村は十数か村で一組に編成され、各村では、廻状を受け取ると名主がその内容を「御廻状写帳(おかいじょううつしちょう)」「御用留(ごようどめ)」などに転写し、廻状の村名下に時刻を記入し次の村へ回し、最後の留(とめ)村から差出者へ返却した。

[森 安彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「廻状」の意味・わかりやすい解説

廻状
かいじょう

江戸時代,幕府,諸藩武士庶民御触書や日常用務を通達した回覧文書。文書を見たものはこれを御用書留帳のような帳簿に写し取って,押印のうえ次へ回したから,文書は最初に出した役所に再び戻る仕組みになっていた。

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世界大百科事典(旧版)内の廻状の言及

【江戸時代】より

…もちろんこれらの情報網から疎外された者のほうが人口比からすれば圧倒的であり,そのためにこの時代では巷間のうわさがさかんに発生し流通した。うわさは火札や捨文,天狗廻状などと並んで民衆レベルの情報伝達手段として今後研究されねばならないが,江戸時代の武士階層を含めて多くの人々が情報に飢えていたことは,内々の情報やうわさを書きとめた〈随筆〉という文学のジャンルが後期に成立したことによっても知られる。
[側近と家老]
 この時代を通じて政策を最終的に決定したのは,出頭人(しゆつとうにん),側用人などと呼ばれた将軍や大名の側近グループであった。…

※「廻状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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