職業別労働組合(読み)しょくぎょうべつろうどうくみあい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「職業別労働組合」の意味・わかりやすい解説

職業別労働組合
しょくぎょうべつろうどうくみあい

企業や工場の枠を越えて同一の職種または職業に属する労働者によって組織された労働組合クラフト・ユニオンcraft unionまたは職能別労働組合ともいう。職能別労働組合は、マニュファクチュア段階の職業クラブに始まり、1850年代以降、産業資本主義段階のイギリスにおいて典型的に発展したもので、職人的伝統の強い機械工、鍛冶(かじ)工、活版工など、生産の特殊な一工程に従事する熟練労働者の組合として組織された。労働組合がこのような組織形態をとったのは、産業資本主義段階とはいえ、生産工程の機械化がなお不十分なもとでの生産は熟練労働者の技術力に依存するほかなく、その労働力を不可欠としていたからであった。職業別労働組合は、この有利な条件を最大限に利用しつつ、当該職業における労働力の供給を独占する一方、高賃金をはじめとする労働条件の改善に努めた。また、職業別労働組合は、組合加入費、組合費の一部を基金とする自助的な共済制度を整え、さらに労働条件の平準化を目標として、徒弟制度による入職制限や職業紹介機能をも担っていた。職業別労働組合は、その強固な団結力をもって労働組合の法的地位を高め、労働者の権利を拡大したが、他方で、それへの加入を徒弟制度を経てきた熟練労働者に限るという排他的、特権的な性格が強い組合であった。このため都市労働者のほとんどが有権者となったイギリスの選挙法改正(1867)や労働組合法の獲得(1871)などの政治闘争を展開したのであるが、その保守的性格は免れず、しだいに戦闘精神を失い、単なる産業上の友愛組合に変質していった。その後19世紀末から20世紀にかけて生産工程の機械化が進展するなかで、職業別労働組合の組織的基盤は徐々に失われ、かわって新しく大量に登場した未熟練工、不熟練工を基盤とする産業別労働組合に労働組合運動の主役を譲った。

 日本の職業別労働組合は明治期より始まり、1897年(明治30)には鉄工組合結成をみ、1907年(明治40)結成の欧文植字工組合の場合は、「労資調和」を目標に、使用者との間にクローズド・ショップ協定を締結していた。また、17年(大正6)には欧文印刷工組合信友会などの結成をみたが、第二次世界大戦後は国鉄動力車労組(動労)などごくわずか、しかも変形した形で存在しただけである。

[吉田健二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「職業別労働組合」の意味・わかりやすい解説

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