日本大百科全書(ニッポニカ) 「組織形態」の意味・わかりやすい解説
組織形態
そしきけいたい
組織の構造を職位もしくは部門、権限、責任の公式化されたシステムとして静態的・形式的側面からとらえた類型のこと。職位とは、職務とその担当者を統合した最小の組織単位である。部門とは、複数人が組織内の一定の課業を遂行するために協働する組織単位をいう。権限とは、職務や課業を正当に遂行できる権力であり、責任とは、権限の反面として負わねばならない義務である。
各種の組織形態は、歴史的、理論的に発展するものとしてとらえられる。発展は、一方では、上下関係を重視する列(縦(たて))形態から格子状のシステムをとる行列(横と縦=マトリックス)形態への展開としてとらえられ、他方では、機械的システム、すなわち課業(職務)と伝達システムを厳格に規定して活動の定常化を意図する剛構造から、有機的システム、すなわち目標のみを明確にして目標達成過程の動的弾力性を尊重する柔構造への展開としてとらえられる。列形態のうち集権的とは、組織構造上、組織上層部に強力な権限を留保せざるをえないものをいい、分権的とは、組織の諸部門に権限を分散することが可能なものをいう。以下、諸形態の特色を簡単に説明する。
直系式は、各組織構成員がかならず1人の直近上級者から指揮命令を受ける形態で、規律維持すなわち秩序化を意図する。そのうち純粋直系式は、水平的関係が単純協業(相互に同質の仕事を分担)によっているが、職能部門別直系式では分業(製造と販売のように異質職能を分担)が採用される。機能式は、各組織構成員が複数の直近上級者から指揮命令を受けるもので、専門化による多元的管理を意図している。直系機能式は、直系式と機能式の両者の利点を意図したが、両者の欠点のみが現れて失敗した。スタッフ(経営者・管理者を側面から補佐する専門家ないしその部門)や委員会制度によって直系式を補強したものが、スタッフ制職能部門別直系式(通常、ライン・アンド・スタッフ式という)とスタッフ制事業部門別直系式(通常、単に事業部制という)である。事業部制は、製品別・地域別などの包括的基準により部門を設け、それらを独立採算単位とするものである。プロジェクト式は、一定の課題(プロジェクト)を達成するための時限的集団であり、プロジェクト・チームもしくはタスク・フォース(機動部隊)の形をとる。行列式は、職能を一軸とし、製品・顧客・地域・プロジェクトなど対象ないし目的を他方の軸とし、両者の交点に各組織単位を位置づけ、二元的管理によって活動内容の充実を図るものである。
[森本三男]