肉体の悪魔(読み)にくたいのあくま(英語表記)Le Diable au corps

精選版 日本国語大辞典 「肉体の悪魔」の意味・読み・例文・類語

にくたいのあくま【肉体の悪魔】

(原題Le Diable au corps) 長編小説。ラディゲ作。一九二三年成立。第一次大戦中、夫を戦地に送った一八歳の人妻マルトと一六歳の少年官能と愛の微妙な心理を、古典的文体で描いたもの。

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デジタル大辞泉 「肉体の悪魔」の意味・読み・例文・類語

にくたいのあくま【肉体の悪魔】

《原題、〈フランスLe Diable au corpsラディゲの長編小説。1923年刊。早熟な少年と出征兵士の妻との恋愛心理を、簡潔な古典的文体で描く。
田村泰次郎の小説。昭和21年(1946)発表。日本軍下士官と八路軍の娘との愛と別れを描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肉体の悪魔」の意味・わかりやすい解説

肉体の悪魔
にくたいのあくま
Le Diable au corps

フランスの作家ラディゲの小説。1923年に「17歳の小説家」の作品としてセンセーショナルに発表され、作者の早熟の天才の名を高くした。ダダシュルレアリスム勃興(ぼっこう)期にあって、新奇を排し、平凡に徹することを選んだ作者は、恋愛を主題とし、主人公の心理の動きを筋立てとする、いわば伝統的な手法のうえにたっている。第一次世界大戦下のパリ近郊を舞台に、時代の異様な空気にいやおうなく浸されて生きる16歳の少年が「出征兵士」の妻マルトとの恋に落ちる。幼さゆえに肉体にとらわれ、若さゆえに残酷を犯すこの恋は、またあらゆる恋と同じく、花開き、熟し、凋落(ちょうらく)する。マルトの死と、その夫の手に残された少年の子供が悲劇終末を飾る。作者自身の体験によりつつ鋭利に分析された思春期の心理は、その不条理な側面を含めて普遍的な人間心理の考察へと深められ、20歳で亡くなった作者の早すぎる老成をしのばせる。

[大崎明子]

映画

フランス映画。1947年作品。クロード・オータン・ララ監督。レイモン・ラディゲの同名の小説を、当時有名な脚本家ジャン・オーランシュJean Aurenche(1903―1992)とピエール・ボストPierre Bost(1901―1975)のコンビと監督が組んで脚本を書いた。当時のフランスでは不道徳として上映反対運動が起きた。主人公のフランソワを演じたジェラール・フィリップは、この映画をきっかけにスターの座へ駆け上った。マルト役はミシュリーヌ・プレールMicheline Presle(1922―2012)。日本では1952年(昭和27)に公開。1985年にスコット・マレーScott Murrayが舞台を第二次世界大戦中のオーストラリアに移してリメイク、さらに1986年にはマルコ・ベロッキオMarco Bellocchio(1939― )が、イタリアの現代を舞台にリメイク作品をつくった。

[古賀 太]

『新庄嘉章訳『肉体の悪魔』(新潮文庫)』

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