家庭医学館 「肛門痒症」の解説
こうもんそうようしょう【肛門痒症 Pruritus Ani】
肛門にかゆみを生じさせるさまざまな病気をまとめて肛門瘙痒症と呼んでいます。原因がはっきりしているものと原因がわからないものがあります。
[原因]
痔核(じかく)、痔瘻(じろう)、裂肛(れっこう)などの肛門の病気、直腸脱(ちょくちょうだつ)などの直腸の病気、腟炎(ちつえん)などの婦人科の病気、皮膚炎などの皮膚科の病気、かびやシラミ、蟯虫(ぎょうちゅう)、下着や生理用品などに対するアレルギー、香辛料(こうしんりょう)の使いすぎ、抗生物質などの薬の使用、下痢(げり)などによる肛門の不潔、以上すべてが肛門におこるかゆみの原因として考えられます。
[検査と診断]
肛門瘙痒症は、さまざまの病気がその原因として考えられますから、皮膚科や外科、肛門科を受診して、きちんとした診断を受けることがたいせつです。
また、慢性の下痢などが原因と考えられる場合には、消化管の検査を行なう必要もあります。
[治療]
原因となる病気がある場合には、その治療を行ないますが、肛門を清潔にし、なるべく乾燥させた状態にしておくことが、すべての肛門瘙痒症の治療の原則となります。皮膚にただれがある場合は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンを含む外用剤が使用されることもあります。
再発することが多い病気なので、治るまで医師の指示に従いましょう。
[日常生活の注意]
肛門を清潔にするには、排便後の始末にかたい紙を使用しないことです。十分に便がとれないばかりでなく、皮膚を傷めることがあるからです。なるべく、坐浴(ざよく)をしたり、温水の出る洗浄器つきトイレやウェットティッシュを使うようにしましょう。洗浄などで清潔にした後は、肛門を乾燥させることがたいせつです。下着も木綿製品を使用すると、皮膚の乾燥にも役立ちます。
肛門瘙痒症は、太った汗かきの人に多いので、予防のためにも、日ごろから肛門を湿った状態にしないよう心がけましょう。